【産業天気図・電子部品】全般回復基調。ただ汎用品の単価下落厳しく収益格差も

拡大
縮小

電子部品業界の景況は今2005年下期以降、引き続き価格下落圧力は強いものの、数量的には拡大が続き、全般的には回復局面となりそうだ。業界大手の収益は上期にほぼ底入れし、下期以降は回復傾向をたどろう。
 電子部品の受注・出荷は05年3月ごろを底に、緩やかな回復基調にある。電子情報技術産業協会の電子部品グローバル出荷統計を見ても、05年9月まで7カ月連続で対前年比プラスを記録。04年夏以降の生産・在庫調整は一巡している。品目別で見ると、スイッチ、コネクターなどの接続部品や光ピックアップ、小型モーターが好調、携帯電話用ブルートゥースモジュールなど高周波部品、電源部品なども拡大基調。汎用部品のコンデンサーは「上期だけで前年同期比20%以上も下落した」(京セラ<6971.東証>)など単価下落の影響がとりわけ大きかったが、足元では数量が過去最高水準になるなど生産は繁忙を極めている。
 最終製品である携帯電話やパソコン、デジタル家電などはいずれも拡大基調にあり、つれて部品需要も伸びる構図。06年前半には冬季オリンピックやワールドカップといったイベントも控えており、薄型テレビなどの出荷は一段と伸びそうだ。
 ただ、最終製品の価格下落の波は、部品業界へも及び、全般に前年比で1割以上の単価下落が恒常的に続く可能性が高い。円高や米国景気の減速、金利上昇といったリスク要因もある。そうした意味で、電子部品業界の収益は05年度下期以降、全般に回復基調とはいえ、回復力としてはそう大きくはなさそうだ。その中で、コスト競争力に勝る企業や高成長製品で差別化できる企業が「勝ち組」となるだろう。
 電子部品大手を個別に見ると、日本電産<6594.東証>はHDDモーターや光ピックアップなどの得意分野が高成長を見せ堅調を維持。村田製作所<6981.東証>も、主力のコンデンサーは価格下落圧力が強いが、パソコンのCPU周りの特殊なコンデンサーに強みを持ち、小型高容量型で先行しているため底堅い。加えて、携帯電話向けブルートゥースモジュールやHDD用ショックセンサーなど独占的シェアを持つ機構部品が高成長にあるのも強み。TDK<6762.東証>はコンデンサーが停滞だが、好採算のHDD用磁気ヘッドを稼ぎ頭に増益基調。アルプス電気<6770.東証>もHDD用磁気ヘッドや携帯オーディオ用スイッチが牽引し好調。
 一方、京セラは部品事業が単価下落の影響で伸び悩むほか、携帯電話端末などの機器事業が足を引っ張り、今期営業増益が微妙な情勢。集積回路が主力のローム<6963.東証>も、CDプレーヤーなど従来型の家電向けの比率が依然高いため単価下落圧力に押され、減益の公算だ。
【中村稔記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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