広告収入重視の「X」は長続きしないかもしれない 専門家も驚く「信頼」で進化する中国SNSの凄み

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尾原:ただフォロワーの数を追いかけて注目を喚起する「アテンションエコノミー」では、人の注意を集められるのであれば手段や質を問わない。それこそ今の日本でも社会問題になっているように「回転寿司チェーンで醤油差しを舐めてもいいよね」といった副作用が伴います。

「アテンションエコノミー」の世界は消耗していく

尾原:でも、「レッド」や「ソーヤング」では、インフルエンサーが自身の信用度を高めるために、フォロワーの意図(インテンション)するとおりの買い物が実現できるよう、有益な情報を発信し続ける。その結果、インフルエンサーとフォロワーの長期的で、かつ健全なエンゲージメントが確立される。これが中国で起こっている「インテンションエコノミー」です。

成嶋:Xが導入した広告収益分配プログラムが話題になっていますが、これも結局は「アテンションエコノミー」の一種で、その人にアテンションが集まれば、その脇道に広告を置いておけば儲かるよ、というビジネスモデルですよね。でも、「それをやり続けて消耗しませんか?」というのがそろそろ問われてもいい気がします。

尾原:おっしゃるとおりですね。中国のようにインフルエンサーが自分の好きなものを提案して、そのインフルエンサーから直接商品が買えて、買ったフォロワーも満足する。そのようにユーザーとユーザーが信頼でつながる世界のほうがよほど健全で持続的です。なんでもいいから注目を集めて見たくもない広告を見せられるアテンションエコノミーの世界はどんどん消耗していくのではないでしょうか。

成嶋 祐介 一般社団法人深圳市越境EC協会日本支部代表理事

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なるしま ゆうすけ

一般社団法人深圳市越境EC協会日本支部代表理事。世界の最先端企業1800社とのネットワークを持つ中国テックビジネスのスペシャリスト。中央大学、茨城大学講師などを歴任。

慶應義塾大学法学部法律学科卒業。株式会社成島代表取締役。2019年から深圳市越境EC協会日本支部の代表理事を務める。

全世界の中小企業を繋げることを目指し、情報テクノロジー、通販分野にて日本と中国の橋渡しを行い、世界規模のグローバルECの開発に向け活動をしている。

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尾原 和啓 ITエバンジェリスト

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おばら かずひろ / Kazuhiro Obara

1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に『モチベーション革命』『アフターデジタル』(共著)、『ザ・プラットフォーム』『どこでも誰とでも働ける』『IT ビジネスの原理』などがある。

 

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