「未承認薬」が使える日は訪れるのか 米J&Jが患者の要請検討する委員会を設置

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しかし、彼らの努力は成功することなく、オーデンは2013年11月に亡くなった。ニック・オーデンの妻、エイミー・オーデンは、「がんと闘うことも、コンパッショネート・ユースについて闘うことも、とても恐ろしいことだった」と言う。

遺族はJ&Jの展開に期待

彼女は「未承認薬の使用における、複雑な倫理的問題に関しては認識している」と言う。しかし、「そうした問題は、会社がその気になれば解決できると思うし、ビジネスモデルの一環として対応することができると思う。でも、企業は重い決断を下したくないのだ」と話す。彼女はJ&Jの決定に拍手を送り、他社もこれに続くことを願うと述べた。

ニック・オーデンの死から4カ月後、メルクは重篤な症状の患者に対する拡大アクセス・プログラムの実施に同意した。Keytruda(キートルーダー)と名付けられたその薬は2014年9月にFDAに承認され、メラノーマ(皮膚がんの一種)患者にとって画期的な医薬品となると注目されている。

メルクによると、同社は患者に十分な量の製品が供給できるようになってから、拡大アクセス・プログラムを実施するという。それ以前は、製品はすべて臨床試験に回される。承認前にキートルーダーを使うことができた患者は、世界で3800人以上だった。

未承認薬の使用要請を受け入れるかどうかについてのメルクのポリシーは、いくつもの要件に基づいているという。たとえば、患者の病状の重篤さや、その医薬品で症状の改善が見込めるか、患者がほかの選択肢をすべて試したことなどである。

メルクの広報担当、パメラ・アイゼレは声明でこう述べた。

「当社の医薬品が効果をもたらすすべての患者に対して、当社は可能な限り早く薬を提供できるよう力を尽くす」。

(執筆:Katie Thomas記者、翻訳:東方雅美)

© 2015 New York Times News Service

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