福島原発事故収拾を任された英雄たちの真実、7次・8次下請け労働者もザラ

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 こうした東電の下請け依存は、いつから始まったのか。「1960年代の配電工事部門の請負化がきっかけだった」と昭和女子大学の木下武男特任教授(労働社会学)は語る。
 
 60年代半ばまでは、柱上変圧器や建柱作業も東電社員が直接施工していた。だが感電死など社員の労災が問題視され請負化が進んだ。原発労働に関しても当時、労働組合から「被曝量が多い作業は請負化してほしい」と要望が寄せられたという。70年代には「秩序ある委託化」が経営方針として打ち出されている。

同時にこれには「地元対策」の側面もある。
 
 「4次、5次下請け以下になると、ほとんどが社員数人の地元の零細企業。お互いに仕事を投げ合い、地元におカネを流す仕組みができている」(関係者)とされる。公共事業での「丸投げ」が難しくなった昨今、電力会社は地元に“仕事”を落としてくれる数少ないお得意様だ。

ピンハネ率は実に8割、労災申請を妨げる「力学」

通常、原発作業の現場を取り仕切っているのは、2次、3次下請けの正社員たちだ。「被災したが、人手不足と聞き職場に戻った。同僚が福島第一で作業している。早く替わってあげたい」。2次下請けの正社員として働く20代の男性は力を込める。

男性は4次、5次以下の下請け労働者とともに仕事をしているが、「定期検査のときなどは20代から60代の作業員が数十人来て、ウチの会社のベテランが管理するが、レベルは低い。給料も驚くほど安い」という。

事実、震災前にハローワークに出されていた地元零細企業の福島第一の求人では、日給9000円から。学歴、年齢、スキル・経験などは、すべて「不問」とされている。これは下請け労働者に対して直接指揮命令する「偽装請負」であり明白な違法行為だが、同時にほぼ「無条件」で集められた出入りが激しい労働者に十分な安全教育をなしうるのかも疑問だ。


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