「年会費1000円アップ」Amazonは安いと言えるか インフレ率や物流のコスト増を考慮すると…

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配送の維持とAmazonプライムの値上げ

昨今では資材を含むコスト増が各社の負担だ。さらに燃料費の増大がある。なにより全体的な人手不足が続く。とくに、この人手不足は物流の業界では最大問題だ。

Amazonは値上げの発表とともに「今回の価格変更後も、プライム関連プログラムの充実、デジタルコンテンツのセレクション拡大、配送スピードの向上、そしてよりご満足いただけるプライム会員限定セールの提供を目指します」としている。

実際にAmazonジャパンは日本全国11カ所に配送拠点を新設すると先月に発表したばかりだ。同社は発表にコメントしていないが、物流の2024年問題が影響しているのは間違いないだろう。配送ドライバーの労働時間が制限され、配送がいっそう難しくなる。ドライバーの人材確保も課題だ。そして、なにより解決にはコストがかかる。

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実際にAmazonジャパンは先の配送拠点拡大のプレスリリースに「自由な働き方のできるAmazon Flex ドライバーを含む、さまざまな働く機会を全国で新たに3,500以上創出する予定」「デリバリーステーションでは、さまざまな経験、性別、年齢、国籍、文化的な背景をお持ちの方々に、多様な働く機会を提供しています。職種は、拠点の安全衛生管理、ステーションマネージャー、シフトアシスタント、Amazon Flexドライバーなど多岐に渡り、互いに協力しながらお客様に商品をお届けしていきます」とも加えた。

また同社は昨年末に“Amazon Hubデリバリー”を発表しているが、これは写真館、新聞配達店、居酒屋、花屋、犬のブリーダーなどの中小企業がパートナーとしてスキマ時間に配送の副業を受託するものだ。配送の維持は喫緊のテーマだ。

話をまとめる。

Amazonは世界全体では広告収入が好調だが、しかしそれでも北米・北米以外のグローバルでは営業損失になっている。現在ではAWSが補填している状況だ。グローバル各拠点では体質の強化が求められる。日本では、物価高騰、人手不足とくに物流領域での困難が続く。そこでAmazonプライムの年会費が値上げされた。

私はそれでもまだ安価だと感じるが、けっきょくは日本の消費者が受け入れるかどうかだ。楽天は言うまでもなく、現在ではヨドバシ・ドット・コムをはじめとしてさまざまな競争相手がひしめいている。すべての手を使って物流を維持せねばならない。消費者にとってプライム=贔屓、にし続けてもらえるかどうか。Amazonのサービス維持・向上に期待したい。

坂口 孝則 調達・購買業務コンサルタント、講演家

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さかぐち たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。著作26冊。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。日本テレビ「スッキリ!!」等コメンテーター。

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