ホンダジェットの開発に"導かれた"男 思いがけず入社3年目に決まった運命

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フロリダ州でビジネスジェット機の仲介を手掛けるプライベートジェットカンパニーのダニエル・ジェニングスCEOは、「ホンダ製品には二輪や自動車で培った信頼性がある。車と同様のサービス体制を築ければ、市場で優位に立てるだろう」と話す。

ホンダもその点は認識しており、13年にはサービスセンターをノースカロライナ州の本社内に立ち上げ、FAAの認証も取得。北米全域で7カ所のディーラー拠点を設け、故障の際に1時間半以内に駆けつけられる体制を整えている。藤野は「今のお客さんをケアすることが、将来もっと重要なビジネスにつながる」と、長期的な視点での事業展開にこだわる。

画一的な市場に勝機あり

顧客に納入してからが、藤野にとって本当の勝負といえるかもしれない

ビジネスジェット機の市場規模は220億ドルで、この10年で2倍以上に成長しており、米欧が市場の7割を占める。ホンダが照準を合わせる小型ジェットの市場を握るのは、米セスナとブラジルのエンブラエルの2強だ。高い安全性が求められるだけに、航空機産業は参入障壁が高く、保守的とも言われる。

米国で平均的なビジネスジェットの利用は2~3人の乗客で1回の飛行距離は1000キロメートル程度。この画一的ともいえる市場性にこそ、ホンダは勝機があると見ている。「適材適所で使い道を絞ったジェットを市場に投入すれば、航空機産業のカルチャーを変えるきっかけになる。新しいコンセプトがあれば、市場のパイも広がる」との思いが藤野にはある。

創業者・本田宗一郎の夢の実現は間近。30年近くかけてやっと事業化のスタートラインに立った。ここから「空」でのホンダブランド育成には、時間のかかる地道な作業になるはず。藤野がホンダジェットに関わり続ける以上、これまでと同様に途方もない努力を強いられるのだろう。すべては、飛行機産業に新しい価値を創造するという”ゴール”のために。

(一部敬称略)

(撮影:尾形文繁)

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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