日本の悪しき文化「下請けイジメ」のヤバい実態 「買いたたき」の定義が拡大、翻弄される大企業

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少し補足しよう。

たとえば、これまで取引先から100円で購入していた品物があるとする。その100円の製品に使われている材料が高騰しているとする。ビジネスパーソンならば市況は把握している。だから、材料が高騰するということは、最終価格の100円にも影響を及ぼすだろう、とは誰もが認識はしている。

が、納品してくれている取引先にあえて照会はしないだろう。「100円じゃなくて、105円に価格改定しませんか?」とは投げかけない。これは自らのコストを引き上げるので当然のことだろう。

しかし、これは、もはや認められない。実際に指摘を受けた企業がある。なぜか。それを理解するためには、「下請法」と「優越的地位の濫用」について、改めて説明する必要があるかもれない。

「下請法」と「優越的地位の濫用」について

下請法は正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」と言い、下請事業者の利益保護のためにある。厳密ではないが、資本金が大きく異なる企業間の取引において、親事業者(発注をする側)の買いたたきを禁止したり、決定済み価格の減額を禁止したりしている。

そして「優越的地位の濫用」とは下請法の概念よりも広く、取引における自社の地位が取引相手よりも優位な場合、不当な方法で相手に不利益を与えることを禁じている。

問題はこの「優越的地位の濫用」だ。先程、発注側は自ら「100円じゃなくて、105円に価格改定しませんか?」と投げかけたりしないと書いた。自らのコストを引き上げるので、当然のことといえるが、お役人たちは事実上の「No」を突きつけた。 

行政の出した「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」において、買いたたきになる可能性があるものとして、「労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと」と明記されていたからだ。

つまり、相手が言おうが言わまいが、打ち合わせの場でハッキリとさせなかったら買いたたきになる、というのだ。これは恐るべき変化だ。

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