【産業天気図・造船】受注残高水準で新規受注は抑制。ただ低価格船主体の完工で収益は低迷続く

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海上輸送量の拡大を背景に、船舶の受注は絶好調を続けてきた。日本の受注量は2003年に2062万総トンと前年比59.4%増の大幅増を記録した後、04年は1550万総トンに落ち込み、05年も第3四半期までの受注が591万総トンと、さらに落ち込んでいる。これは、各社とも08年度まで仕事量は埋まっているため、新規受注を抑制しているためだ。豊富な受注残で、造船各社ともフル生産状態にある。舶用エンジンなど関連機器も生産は絶好調。エンジン用クランクシャフトなど特殊な部品は製造メーカーが限られることもあり、需給逼迫状態が続いているほか、アルミなど特別な素材の不足感も依然深刻だ。
 しかし、現在建造中の船舶は造船不況で競争が激しかった3年前の前後にとったもの。採算が厳しく、各社赤字となっているところが多い。三菱重工業<7011.東証>では06年3月期の船舶・海洋の受注が前期の2993億円から2400億円に減少、引き渡し数の減少で売り上げも19%減少し、営業損益は80億円(前期117億円の赤字)の赤字が続く。石川島播磨重工業<7013.東証>は受注が1600億円(前期1433億円)と増えるものの、売り上げは1150億円と5.8%減となり、営業赤字は95億円(同135億円の赤字)。川崎重工業<7012.東証>も船舶受注が1300億円(前期比16.6%減)の見通し。売り上げは1100億円(同26.4%増)となるが、営業損益は15億円の赤字(同10億円の黒字)となる。三井造船<7003.東証>も営業赤字に転落する。ただ、最近は円安傾向にあり、川崎重工のように「収支均衡か若干の黒字」を視野に入れる社もある。
 06年度も採算的には若干改善の方向にあるものの、依然厳しい状況が続きそうだ。まだ、建造工事が低価格船主体のためだ。収益が急速に良くなるのは、ここ1~2年に受注した高価格船が売り上げに立ってくる07年度以降になる。
【田中房弘記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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