席巻!TBS「SASUKE」の人気が止まらぬ理由 イギリスで放映開始、他の欧州諸国も関心

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「世界のフォーマット番組は、時には相手を陥れ、踏み台にしてまでも必ず勝者を生み出します。その対極にある「勝者がいない事の方が多い」番組は、長年海外からは受け入れられませんでした。『SASUKE』の醍醐味は、選手たちが、日頃の努力をたった一度の挑戦で結実させられるか、臨場感を持って視聴出来る点です。そこに選手同士の闘いはなく、勝敗もないことに多くの日本人は違和感を持ちません。むしろ『SASUKE』制覇を目指す選手たちが切磋琢磨したり励まし合ったりする姿に共感したり、「相手との闘い」ではなく「己との闘いや限界」に挑む姿に感動してしまう。

これこそが、ハラハラ感やドキドキ感に勝るとも劣らない『SASUKE』の魅力の一つで、それが海外にも理解され急速に波及しているのが現状なのかと思います。多くの海外版で、自国のコースを発祥の地にちなんで「Mt. Midoriyama(緑山)」と名付けていることから、“Conquer Mt. Midoriyama!”(世界最難関のコース「ミドリヤマ」制覇!)が世界各国でも選手たちの合言葉になっています。長年理解されなかった『SASUKE』の魅力、そして日本的価値観が、世界の人達にも理解され尊敬の念を持って受け入れられていると実感出来るのが何よりもうれしい。そしてそれが、放送だけでなくSNSで国境を越えて拡散しているのはまさに時代の潮流に乗っているのかも知れません」と分析する。

もちろん、TBSのご本家『SASUKE』はSNS全盛の昨今企画されたものではない。時代が変化する中で、元々のフォーマットとしての素性の良さに加え、SNSとの相性の良さ(=親和性)が重なり、人気を高めてきた。

そうした意味では偶然の要素も強いと言えるが、しかしそこには”番組フォーマット”を世界中で流行らせる秘訣が見え隠れするように感じる。

Got Talentの魅力とは?

たとえば、英国発祥で世界的な大ヒット番組フォーマットとなった『Got Talent(ガット・タレント)』は、スポーツとオーディションという違いこそあれ、ハードルの高さやクリアに至るドラマ性、そこから生まれる”視聴者が物語を口伝したくなる”要素、それに一般視聴者から”一般的ではない”能力を備える参加者が番組の中心人物になる、といった、『SASUKE』フォーマットに通じる“バズ”を有む要素やSNSとの相性の良さなどがある。

日本でも有名になったスーザン・ボイルが、この番組をきっかけに世界的に旋風を巻き起こし、今ではプロの歌手として活躍していることをご存知の方も多いだろう。『Got Talent』もまた、SNS全盛時代に生まれたフォーマットではないが、”バズ”を生み出す本質に大きなちがいはない。

ここまでフォーマットとしての人気が定着し、スポーツ、フィットネスの世界で一般的なものになってくれば、当然、そのフランチャイズを拡げていくという未来も拓けてくるだろう。この点においてもTBSの『SASUKE』フォーマットには期待せざるを得ないが、しかし『SASUKE』の成功だけに喜んでもいられない。

コンテンツ輸出という面では、文化的、人種的中立性を保ちやすいフォーマット輸出は、今後も力を入れるべき分野であろう。『SASUKE』は今後もさらに大きな市場を生み出しそうだが、この成功を次の日本の番組フォーマットに活かせるだろうか。来年以降の「Treasure Box Japan」にも期待したいところだ。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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