受信料収入激減も?韓国「公共放送」大ピンチの訳 受信料の別途徴収で本社には"弔花"が届く事態

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テレビ業界では、今回のKBS受信料の分離徴収により、KBSの経営はさらに厳しくなると見られており、「KBSが生き残る道はただ1つ、ドラマ、芸能中心のKBS2を売却すればよい。どうせエンターテインメントでも視聴率が落ちているんだから」といったことがまことしやかに囁かれている。

ドラマ界では、ドラマ制作会社と地上波テレビの力学が変わったことにより、かつて甲だったテレビ局は軒並み、”乙”の立場に追いやられているのが現状だ。そのKBS2を虎視眈々と狙う他メディアや他業界がすでに動き出している。

「受信料廃止の時代へ向かう」

韓国ではインターネットを基盤にしたテレビ「IPTV」に加入している世帯は56%ほどいるといわれる。IPTVには、ニュース専門チャンネルもあればドラマ、映画、音楽専門、そして地上波のコンテンツを再放送するケーブルテレビも含まれており、チャンネルの選択肢は格段に広がった。「受像機があるだけで受信料をとられるのは理不尽」という声も多い。

また、最近増えている1人世帯ではスマートフォンを利用した視聴が主流になってきており、視聴スタイルの幅も大きく変わってきた。与党所属の洪準杓大邱市長は、自身のフェイスブックに「KBSは新しい道を探せばいい。どのみち受信料廃止の時代へ向かう」と書き込んだ。

公営放送KBSの受信料の別途徴収は、変化の速い韓国にあって韓国メディアの構図をがらりと変えるシグナルになるかもしれない。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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