「ホンダが航空機産業の文化を変える」 ホンダ エアクラフト カンパニー社長に聞く

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機体だけでなく、搭載するエンジンも自社製

実際、われわれのように、飛行機を納入する前にサービスセンターを立ち上げた例はあまりない。北米全体にディーラーネットワークを張り巡らせて、1時間半以内に必ずサービスを受けられる体制にしているのは、他の新規参入メーカーとはまったく違う。短期間に強いディーラーネットワークを構築したのは、ほかのメーカーから見ると脅威だろう。

――これまでの航空機メーカーと違い、エンジンと機体の両方が自社開発というところにも特徴があります。

機体はホンダ製だがエンジンは他のメーカーとなると「メンテナンスはほかとあまり変わらないのでは」と受け止められるかもしれない。(機体だけでなく)エンジンも、日本企業の、ホンダの体質でサービスを非常に重要視しており、きちんとしたサービスが受けられる。

グローバル企業の当社が機体とエンジンの両方をやっているメリットはある。飛行機業界ではエンジンメーカーがさまざまな機体に売るのはまったく普通。エンジンの信頼性を実証できれば、他の機体メーカーが興味を示すと思う。

トイレは最初から重要なファクター

主翼の上にエンジンを置くという従来にない設計で、機内の空間を大きく取ることが可能になった

――トイレが個室という点にもこだわりを感じます。これが購入の決め手になったケースはありますか?

あると思います。トイレはビジネスジェットに乗る時に結構プレッシャーになるので、すごいメリットがある。既存の航空機は簡易タイプが多く、匂いも気になる。必ず乗る前に済ませておき、乗っている間はお酒を控える人もいる。

飛行機の設計は、どうしても理論に基づいた空力や構造に注力しがちになる。だが、自動車を見ても分かるように、あらゆるスペースに小物を入れる場所として使っている。ホンダジェットの大きなスペースをどう使うかと考えた時、最初からトイレは重要なファクターだと考えていた。

――新規参入で成し遂げたいことは。

「ビジネスジェットなんか」という最初のリアクションを変えていきたい。今回、日本をホンダジェットで回ったが、全員は乗れないので定期便を利用した。そうすると、(両方に乗ってみて)あまりに疲労の度合いが違うので、”タイムマシン”と言っている人もいた。

また、ほかのビジネスジェットとは振動や与圧の感じが違う。飛行機は空に上がっていくとき、きちんとしたスケジュールで与圧(外の大気圧よりも機内の気圧を上げて、地上と同じような気圧に保つこと)しないと疲労を感じるんです。ホンダジェットの場合、与圧をすべてコンピューターでやっているので、乗った後にもう一回乗りたい、もっと乗っていたいと感じる。これは新しい価値だと思う。

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