就活の「おわハラ」、学生は従わなくていい 企業が就活を制限できないこれだけの理由

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「就職活動は、憲法22条が保障する『職業選択の自由』から、自由に行うことができます。採用内定は、法律的には労働契約が成立することを意味します。そして、採用内定を受けた場合でも、いつでも自由に内定を辞退することができます(民法627条)。ですから、採用内定を受けた後でも、他社への就職活動も自由にできるのです」

笹山弁護士はこのように述べる。では、「おわハラ」は、やはり問題があるということだろうか。

「『他社の採用内定を辞退したらウチの採用内定を出す』と言われても、他社を辞退した後に採用内定が本当に出るのかどうか、何の保障もありません。また実際に採用内定が出ても、内定取り消しのリスクがあります。内定取り消しの違法性を争う際のハードルは高いのです。

こうしたことから考えると、企業が就職活動を制限することは許されません。採用内定を出したからと言って、他社への就職活動を行うことを禁止することはできません。他社の採用内定を辞退するよう命じることもできません」

もし「おわハラ」を受けたら?

実際に「おわハラ」を受けた就活生は、どう対処すればよいだろう。笹山弁護士は次のようにコメントした。

「『それはできません』と断って、なんの問題もありません。ハッキリと断れない場合でも、『他社からの内定取得や就職活動を辞退せよ』という言葉に従う必要はありませんから、これまでどおりに就職活動を続けてもらってかまいません。

そもそも、『この場で他社に辞退の連絡をしたら採用内定を出す』と言うような会社は、まともな会社かどうか疑問があります。こちらからお断りしたほうがいいかもしれません」

笹山 尚人(ささやま・なおと)弁護士
2000年弁護士登録。著書に「人が壊れてゆく職場」(光文社新書)、「パワハラに負けない!」(岩波ジュニア新書)、共著に「学校で労働法、労働組合を学ぶ」(きょういくネット)等がある。
事務所名:東京法律事務所
 
 
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