東京電力を蝕む巨額賠償、見えない被害「範囲」

東京電力を蝕む巨額賠償、見えない被害「範囲」

前代未聞の損害賠償対応が動き出した。

東京電力福島第一原子力発電所事故による被害が膨らみ続ける中、東電は4月15日、原発から半径30キロメートル圏内で避難や屋内退避となった住民に、1世帯当たり100万円(単身世帯は75万円)の仮払い実施を発表。文部科学省も原子力損害賠償紛争審査会を開き、指針作りに取りかかり始めた。

今回、政府側は「一義的な責任は東電にある」との認識を示しており、基本的には東電が賠償に関して無限責任を負う公算が大きい。こうした中、焦点は賠償策に加えて、賠償範囲や規模などに移っている。後者の基準となるのが審査会による指針だ。

審査会が設置されるのは初めてではない。過去には1999年に茨城県東海村のJCOによる臨界事故の際に指針を策定。今回の指針作りにも法曹界のエース級弁護士などがずらり名を連ね、「迅速性を重視して、できるものから指針を作る」(原子力損害賠償対策室)と対応を急ぐ。

見えない風評の定義

だが、指針策定や賠償対応はすんなり進みそうにない。

「出荷制限で野菜販売が不可能に」「福島県と書いてあるだけで商品が返品になる」「福島県以外でも観光客が激減した」──

4月7日に開かれた審査会の初会合では、農林水産省や中小企業庁など各省庁の担当者が2時間にわたって次々と被害状況を報告した。被害を訴えているのは避難や屋内退避となった地域の住民だけでなく、農家や漁師から病院、市営バスなど幅広い。JCOの賠償基準作りにかかわり、原子力賠償法に詳しい中所克博弁護士は「今回の指針作りは、JCOのときとは比べものにならないほど難しくなる」と懸念を示す。

課題は大まかに言って二つある。一つは被害「規模」。JCOの場合、避難対象は半径350メートルだったが、今回は警戒区域が原発から半径20キロメートル、屋内退避指示区域は半径30キロメートルとケタ違い。放射性物質拡散範囲はさらに広いうえ、海洋汚染の問題もある。

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