中部電力が参画、地熱発電ブレークスルーの期待 革新技術持つカナダ社と提携、日本でも実用化狙う

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一定の出力によるベースロード運転のみならず、エネルギーの需要が少ない時には地下に蓄熱し、需要が多い時に蓄熱したエネルギーを取り出して電力に変換することができるのも特徴だ。いわば巨大な蓄電池のようなイメージだ。エバー社の試算では4~10分でフル出力に高められるといい、「調整用電源としても期待できる」(佐藤氏)。

ゲーレッツリート地熱事業の設備構成図。約5000メートルの地下深くにループを掘削・設置し、内部に水を循環させて熱を取り出す(提供:中部電力)

中部電力はドイツでのプロジェクトに先駆けて昨年、エバー社本体に出資し、現在の出資比率は10%弱。エバー社との提携にかかわってきた佐藤氏によれば 、「エバー社は第1弾のドイツでの成功を足がかりにして、世界25カ国以上でプロジェクトを計画。その総出力規模は原子力発電所約10基分に相当し1000万キロワット超に上る。そこには日本も含まれている」。

日本でもゲームチェンジャーに?

中部電力はエバー社の技術を基に、日本での地熱開発を狙う。ドイツでの事業が成功すれば、日本にとっても朗報になるかもしれない。

というのも、日本はアメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位の開発ポテンシャルを持つ地熱エネルギー大国でありながら、資源の大半が自然公園内にあることに加え、開発コストの高さや成功確率の低さにも阻まれ、遅々として開発が進んでいないからだ。政府のエネルギー基本計画では2030年までに地熱発電施設を現在の倍に増やすのが目標だが、それが達成できたとしても発電電力量全体の1%を賄うにとどまる。

エバー社の技術が実用化できれば、地熱開発が直面している厚い壁を突破できるかもしれない。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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