クレハは余震で自家発電に支障、いわき事業所の全面再開がズレ込む。年10円配は実施【震災関連速報】

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クレハは余震で自家発電に支障、いわき事業所の全面再開がズレ込む。年10円配は実施【震災関連速報】

クレハのいわき事業所(福島県いわき市)の全面再開は、4月11日に発生した余震で自家発電設備の一部に支障が出たため、当初の4月下旬から5月初旬にズレ込みそうだ。

いわき事業所は、クレハ単体売り上げの4分の3を担う主力工場。海から2キロメートルの立地だが、幸い、3月11の東日本大震災では津波の被害を免れた。「化学プラントそのものの被害は大きくなかった」(会社側)が、自家発電設備の配管トラブなどの修復に手間取り、4月下旬の操業再開を目指していた。

その後、小名浜港や高速道路など物流環境も徐々に復旧に向かっていたが、大震災の1カ月後、工場から10キロメートル地点を震源とするマグニチュード7の余震が発生。再び自家発電設備に支障を来し、操業の全面再開を1週間ほど延期せざるを得なくなった。無機・有機薬品、自動車向けなどのPPS樹脂、包装フィルム原料、リチウムイオン電池のバインダー用樹脂は、5月初旬の生産再開となる。「再開すれば、需要を見ながら、速やかに操業を上げていく。5月下旬には正常化する」という。

一部で、「クレハの部材供給が途絶えたため、スマートフォンなどの生産に影響が出た」と報じられたが、会社側は「いわき事業所は、もともと4月から5月にかけて定期修理を予定していた。あらかじめ厚めに在庫を手当てしていただいたはず」としている。

なお、慢性腎不全薬「クレメジン」、電池用負極材「カーボトロンP」はすでに生産を再開しており、太陽電池向け炭素繊維炉材は4月下旬に生産を再開する。

クレハの前11年3月期決算については、営業利益、経常利益は会社計画数字(それぞれ10年3月期比5.2%増の60億円、同9%減の50億円)を確保したもようだが、被害損・修復費用などの特別損失を計上するため、従来の最終利益計画24億円(同52.8%増)は厳しそう。ただ、「最終赤字になることない」としており、期末5円(通期10円)の配当実施を決めた。

今12年3月期の業績見通しについては「決算発表日までに詰める」としている。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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