テレビ朝日の報道が「マイルドブレンド化」? メディアが政府に牙を抜かれる異常事態

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原発の再稼動、特定秘密保護法、集団的自衛権、カジノ法案・・・以前のテレ朝の報道番組ならば、安倍政権やその政策に対して根本的なところでその是非を問い、異論を唱えていた。

ところが、憲法改正の中身そのものを問うのではなく、それに向けた論議の進め方という周辺的な部分について、「安倍総理は堂々とド真ん中で勝負して欲しい」などと"注文をつける"といった無難なトーンが急に目立つようになってきた。

これは、『報道ステーション』で同番組のコメンテーターだった古賀茂明氏が、菅官房長官ら「官邸からバッシングされている」と爆弾発言(3月27日)したあとの4月17日、自民党の情報通信戦略調査会がテレビ朝日の福田俊男専務から事情聴取したことと無縁ではない。

自民党はテレビ朝日だけでなく『クローズアップ現代』の“やらせ疑惑”が問題になったNHKも堂元光副会長からも事情聴取を行ったが、「自民の狙いはテレ朝の『報ステ』だ。(中略)調査会幹部の一人は『NHKはどうでもいい。狙いはテレ朝だ』と話」したという(4月18日・朝日新聞朝刊)。

関係社員や幹部の処分のなどを発表

さらに10日後の4月28日、この2つの放送局は関係社員や幹部の処分、役員による報酬の一部の自主返納や再発防止策が発表した。テレビ朝日も自民党の対応を睨みながらの一種の「出来レース」だったことは、自民党の「放送法の改正に関する小委員会」が4月22日の会合でテレビ朝日の対応待ちで一致していたことでも明らかだ。

いずれにせよ、政府・自民党にとっては政権に批判的で目の上のタンコブ状態だったテレビ朝日『報道ステーション』に正々堂々と圧力をかける口実を与えてしまったのが古賀発言だった。そして、テレビ朝日は、自民党の思惑通りに軍門に下ったかっこうだ。

それにしても4月28日にテレビ朝日が公表した「再発防止策」には驚いた。テレビの「報道の自由」をかなぐり捨てるような内容になっていたからだ。吉田慎一社長は、今回の事態が起きた原因について「ゲストコメンテーターとの意思疎通の不足と、信頼関係の構築が不十分だったこと」と分析。再発防止策として「コメンテーター室(仮称)」の新設などを発表した。

今後はこの「コメンテーター室(仮称)」を通じてコメンテーターと局側との意思疎通を強化していくという。これでは、大枠でテレビ局側の意向の範囲内でコメントしろと言っているようなものだ。外部の人間であっても局の方針に反するような自由なコメントは許さない、という決意表明でもある。

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