韓国企業は「円安の長期化」で大打撃を受ける とくに中小の輸出企業への影響は深刻

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円安がもたらす最大の不安は、輸出部門である。韓国企業は日本企業と輸出における競合度が高いため、為替レートによって少なくない影響を受ける。韓国国会立法調査処によれば、韓国の輸出上位100大品目と日本のそれを比べると、55品目が重複している。重複した品目が韓国の総輸出に占める割合は54%。韓国貿易協会が50万ドル以上の輸出企業654社を対象に行った調査では、34.9%が自社の輸出品目が日本企業と競争関係にあると回答している。

とはいえ、これまでの円安ショックが韓国経済に与えた影響は限定的だった。日本向け輸出はかなり減少したが、日本から部品を輸入する企業は円安の恩恵を受けた。日本と輸出で競合する第3国でも、円安の影響はそれほど強くはなかった。

日本企業が値下げを積極化すると?

これには理由がある。日本企業が輸出価格の引き下げには、消極的だったためだ。円安で生産原価が下落したが、これを反映させ当面の製品価格を引き下げて販売量を増やすより、輸出価格を維持して採算性を高めることを優先していたのだ。

実際、日本の輸出企業はアベノミクスによる輸出量の増加よりも、営業利益の増加のほうが急だった。日本の内閣府の発表によれば、2014年の業種別営業利益の増加率は鉄鋼が64.8%、電気電子64.7%、建設59.2%となっている。サムスン電子や現代自動車、ポスコなど韓国の看板企業の営業利益が大きく減少したのとは対照的だ。

問題はこれからだ。日本企業がさらなる円安と円安傾向の長期化を前提として、輸出価格を大きく引き下げる可能性がある。そうなると、韓国企業は直撃弾を受けることになる。

その懸念はすでに現実化している。日本企業は最近、輸出価格を本格的に引き下げ始めたのだ。韓国貿易協会国際貿易研究院によれば、日本企業と競争関係にある韓国企業のうち71.2%が、「2015年は日本企業が輸出価格を引き下げるだろう」と予想している。日本の民間機関は今年、企業が輸出価格を引き下げることにより、輸出量が3.6%増えるものと予想している。

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