東京電力、2015年度に待ち受ける不安要因 原油安効果あってもコストが増大

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2014年度は大幅増益を達成した(東京電力の廣瀬直己社長)

「コスト削減の成果が着実に出ているのは事実。ただ、期間収支を何とかやりくりしている状況で、継続的に黒字を生み出す構造にはまだなっていない」

2013年度(2014年3月期)に続いて、2014年度も経常黒字を達成した東京電力。4月28日の決算会見で廣瀬直己社長はこのように述べ、収支安定化には柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の再稼働が欠かせないことを強調してみせた。

2014年度の連結決算は、経常利益が2080億円と、前年度の1014億円から倍増した。単体では1673億円(前年度比3.9倍)となり、昨年1月に策定していた再建計画(新・総合特別事業計画)とほぼ同額に。一方、この2015年度については、全機停止中にある柏崎刈羽原発の「再稼働の見通しが示せない」(廣瀬社長)として、会社側は業績予想を“未定”とした。

2015年度は電力の販売量が増加?

2014年度、最大の増益要因は5年ぶりとなる燃料費の削減だ。販売電力量の下落や、修繕費、購入電力料などの経費増加を吸収した。単体での燃料費は、前年度と比べ1割(2643億円)も減った。円安の影響でなお高水準とはいえ、火力発電量の減少や燃料輸入価格の低下、千葉と鹿島の火力発電所の発電方法変更に伴う熱効率アップが効いた。減価償却費や、人件費も減った。

福島第一原発事故の損害賠償費5959億円を特別損失として計上し、純利益は実質的には巨額赤字が続く。だが、東電の5割強の株式を持つ原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金8685億円が特別利益に計上され、結果的には大幅黒字に。損害賠償費とその立て替え支援金である資金交付金は本来同額だが、計上時期のズレで交付金が大幅に上回った。

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