NTT鵜浦社長「単純な割引サービスはしない」 大変革期に「民営化30年」の節目

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――日本ではM&A後に苦戦するケースも多いように見受けられる。

まさに悩んでいるテーマで教科書的な答えはない。以前、多くのM&Aを成功させているEMCに秘訣を教えてほしいとボストンまで行ったことがある。ジョー・トゥッチCEOに話を聞くと、率直になるほどと感じるところも多かったが、米国企業も同じ悩みを抱えているとも思った。

過去に失敗もしたが、難しいのは人材を維持すること。そしてトップを入れ替えるときの方法だ。これには答えがなく、試行錯誤している。日本だけでなく世界で難しいようだ。ただ、直近では人材の流出を極めて低く抑えることができている。買収した会社の創業者と、どれだけの信頼関係を作れるかどうかといった点などが重要になる。

ビックデータは行政と組み、医療や教育に使っていく

――今後、グループとしての取り組む課題は何か?

先日、福岡市と包括協定を結んできた。福岡市とは、NTT都市開発が天神地区の再開発で協力し、NTTファシリティーズも埋め立て地で太陽光発電事業を手掛けている。NTTコムも国家戦略特区(地域限定で規制を緩和する)の協議会でスポンサーをしている。ほかにもJTBと協力した観光Wi-Fiなどを実施した。髙島宗一郎市長からは、数値面のデータを基に行政改革や地方創生を進めたいという要望があり、包括提携となった。

観光Wi-Fiの取り組みでは、海外の観光客がどこを訪れ、時間帯ごとにどんな動きをしたか、データを集めて提供した。このように、行政が間に入ることで、色々なデータを集めて処理をするというのが日本のビッグデータ処理のひとつの方向性だろう。

一企業がデータを抱えるのではなく、行政を通じて医療や教育などに使う。こうした取り組みを色々発表できればと思っている。現在、持ち株会社の中には、オリンピックや地方創生をテーマにしたグループ横断プロジェクトを設置しており、他社も含めてさまざまな取り組みを進めていく。

――携帯業界の競争はどう変化していくか?その時に、ドコモはどうすべき?

この10年間で競争のフェーズは変わった。以前はそれぞれの携帯会社がそれぞれの端末で競争していたが、終わりつつある。今は端末もネットワークも同じで特徴がない。それをどう考えていくかだろう。ドコモにはよく「競争力を説明してみろ」と言っている。

これは日本の競争力の課題でもある。携帯会社が寡占状態だとよく言われるが、これは世界中で起こっていること。それよりグーグルやアップルのサービスしか受けられないことのほうが問題ではないか。どのような形で、彼らと共存しつつ競争していくのか。もしわかっていたら黙ってやりますよ(笑)。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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