ヤマト、なぜ値上げをスローダウンするのか チラつく"あの会社"の影

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いまは廃止されたメール便(撮影:梅谷秀司)

2015年度の宅急便個数は11.0%増(18億個)を計画。「既存商品の個数は増加を見込んでいる」というが、新商品の計画個数は公表されず、現状ではその成否は予想しがたい。

クロネコDM便の計画数は、旧メール便との対比で12.4%減(16億6500冊)の計画で、この減少分が個人向けの剥落数とも解せるが、新商品でこれを埋めきれるのかどうか。

また、既存サービスの値上げは進めてはいるものの、宅急便単価は565円と前年度より30円下落する見込みだ。これは今期から、より低価格の新商品が加わるため。新旧商品の食い合いや、採算性も気に掛かるところだ。

新商品に手ごたえはある

山内社長は「新商品は今後成長するEコマース市場にきちっと手を打つということでスタートした。認知度はまだまだだが、感触は非常に良い。お客様から良い声を聞かせてもらい手応えを感じている。新たな契約も頂いている」と話す。

ヤマト運輸・長尾裕社長も「ネコポスは、フリマの個人の顧客が最初に反応し、日に日に取り扱い個数が伸びている。今後は取扱窓口が増えていくことがプラスになる。大口顧客は、システム変更に時間がかかるため、第2四半期から動きが出てくるだろう。今後、半年程度は猶予期間としてじっくり(移行や新契約の獲得を)進めていく」と語るように、出足はまずまずのようだ。

もちろんJPでも類似商品が少なくない。JPが4月に投入したA5サイズの専用封筒サービス「スマートレター」はネコポスと正面から激突する競合商品と言えるだろう。

この点、山内社長は「メール通知の有無など、内容の違いをアピールしていきたい。また、匿名配送ができる、フリマ個人間で利用勝手の良いサービスなど、今後さまざまな付加サービスを予定・検討している」と話す。サービス内容や品質面での違いを武器に、上場間近のJPを迎え撃つ算段だ。

石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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