宅建資格の格上げは「仏作って魂入れず」だ!

新たな"士業"は不動産業界に何をもたらすか

今回の改正に伴って「宅地建物取引士の使命と役割」という科目が追加されたが、全5時間40分の講習のうち、割り当てられたのはわずか1時間。筆者が参加した4月13日の講習では、講師である弁護士がテキストを読み上げるだけのポイント解説であっさりと終わってしまった。しかも、後半は確認テストに充てられたため、実際の説明は1時間もなかった。

これで宅地建物取引士としての自覚が身につくのか。資質向上に向けた体系的な研修を業界団体や各事業者に委ねるのであれば、それこそ問題といわざるをえない。

変更点は"精神論"に終始

さらに付け加えれば、取引実務は何も変わっていない。重要事項を説明して説明書に記名押印する、契約成立後に交付する書面に記名押印する、といった有資格者だけに認められた業務はそのままだ。使命感や職業倫理の向上という“精神論”に終始しているだけで、消費者保護に資する具体的な改正点はまったく見当たらない。

証券会社の場合、外務員資格の取得と外務員登録が必須で、証券外務員の試験に合格しないと仕事ができない。これに対し、不動産業務は特別な資格を必要としない。新卒の社会人1年生が入社数日後にモデルルームでマンションの販売をしても何の問題もない。不動産取引には幅広い知識と高度な職業倫理が求められるにもかかわらず、業界未経験の新人が高額な物件を売ることができる。

この不安を払拭するためにも、今回の改正では宅地建物取引士の独占業務に手を加えるべきだった。現行法では、不動産の賃貸借・売買行為に資格制限は加えられていない。不動産業者の従業員であれば、宅建資格の有無にかかわらず取引業務が行える。「不動産業はクレーム産業」という汚名を返上するためにも、規制強化に動くべきだ。

試験に合格したら終わりではなく、単位制度を導入して継続教育を実施するなど、業界を挙げた自己啓発・資質向上の仕組みづくりが不可欠だろう。今回の改正が「単なる名称の変更だけではないか」などと揶揄されないよう、法定講習に効果測定を導入するなど、本腰を入れて取り組む必要があるはずだ。

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