新橋ビル爆発で学ぶ「ガスの扱い」我々ができる事 決して他人事ではない、身を守るための対策は

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「もしガス検知器を設置していたとしても、内装業者がガスのにおいに気づいていなかったとしたら、ガス検知器も作動しなかったはずです。床下配管でガスが漏れた場合は、3階のガス検知器はすぐには鳴らなかったでしょう」

2階の店舗はそもそもガスの契約がなかった。そういう意味では2階にガス検知器を付ける根拠がない。ガスの契約もないのに検知器だけ付けるのかという話になるからだ。

「ガス会社に通報がいく連動式の検知器を、ガス契約がないところに設置する根拠が必要になり、コスト面などで管理者も二の足を踏んでしまうかもしれない」としたうえで、桑名教授は今回の爆発については、「内装業者だけの問題と言い切れない」と話す。

「今回、内装業者が栓を開けてしまったとすれば、そもそも危険性の認識が薄かったということになりますが、問題はそれではなく、システム(仕組み)で防ぐことができたかということです」

「システムで防ぐ」とはどういうことなのか。

「例えば、ガスの配管を赤く目立たせ、危険である印をつけるよう義務付けるといった考え方があります。そうすればガスが通る配管は見たらすぐわかる。作業する人も簡単には触らないでしょうし、触ってしまったら事業者に連絡がいくかもしれないと、警戒感を高める効果があるでしょう」

爆発は防げなかったのか?

多くの人が通る路地にある雑居ビル。ガスの異臭に気づいた人が通報していたら…(写真:筆者撮影)

今回のガス爆発の報道に接して、桑名教授は強く感じたことがある。

「3階でガスが漏れて2階で充満したということですが、爆発までに2時間ほどあったわけです。その間、周囲でガスのにおいに気づいた人は本当にいなかったのか、疑問です。もしかしたら、現場の近くを歩いていた人の中にガスのにおいを感じていた人がいて、その人が通報していたら、この爆発は防げたかもしれないのです」

今回の爆発は1回だったが、ガスの充満が続いていたら2回目、3回目の爆発が起こる可能性があった。

「爆発があったらまずは一刻も早くそこから離れるべきです。その際、爆発した場所と反対方向に逃げることが重要です。そのほか、普段から飲食店などの店舗に入る際は、非常口だけでなく、出入り口以外にほかの出口があるかどうかも確認しておくことが必要です」(松丸さん)

工事関係者に限らず、私たちはガスの取り扱い、爆発事故から身を守るためには、何に気をつければよいのだろうか。

ガスの元栓(写真:yukiotoko/PIXTA)

「ガスはガス管を通って供給されているので、ガス漏れを感じたらすぐに閉められるよう、ガスの元栓の位置を常に確認しておくことが大事です。屋外などに設置されていることが多いガスメーターでガス供給が管理されている場合もあるので、ガスメーターの設置場所も確認しておくとよいでしょう」(桑名教授)

生活に欠かせないガス。一方で扱い方を間違えると今回のような大惨事を引き起こす。私たちも当たり前のように使っているガスについて、今一度その取り扱いについて考えてみてもよいかもしれない。

一木 悠造 フリーライター

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いちき ゆうぞう / Yuzo Ichiki

ノンフィクションの現場で取材・執筆を重ねてきたフリーライター。

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