日本人より優雅?定年後中国人の「懐事情」 爆買いする中国人はいかにして生まれたか

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その後、好調な経済発展の流れに乗って、もともとあった社宅を定年前に安く購入できるように。それを転売することで大きな差額を生み出し、年金以外にも財産を持っているケースが多い。なるほど、こういう事情なら、日本への旅行で贅沢もできそうだ。

一人娘は「両親は若い頃、とても貧しかったせいでしょうか、中国の光熱費は日本より断然安いのに、真冬でもあまり暖房を入れず、家の中でもコートを着ているんですよ。お肉より粗食のほうが好きみたいだし、服もあまり買わない。だから全然おカネが減らない!(笑)。できるだけ私におカネを残して、将来、中国に戻ってきて面倒を見てほしいと思っているみたいなんですよね~」と笑うが、私が知る限り、このケースに似た定年世代は非常に多い。

あまりに急速に世の中が変わり、経済成長が早すぎたせいか、おカネは持っていても、使うことにはあまり慣れていない人が多いのだ。

職業や、住む場所によって「格差」も

北京で公務員を退職した陳さんの年金は月額6000元(約12万円)。ある省庁の局長だったので、同時期に退職した他の公務員よりも若干多いという。陳さんは公務員時代、官僚が集まる会員制の倶楽部にたびたび出入りするなど、羽ぶりのいい生活をしていた。

「あの頃は、1回行けば3000元(約6万円)もするコース料理なんかを平気で食べていましたね」。むろん、今はそんな贅沢はせず、楽しみはもっぱら近所に住む孫の世話をすることや、中国の高齢者の間でも流行っているSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をスマホで見ることくらいだ。

「朝5時ごろ起きて公園に行き、1時間ほど、ご近所の友だちと体操をします。病気になったら医療費が大変なので、健康第一。それから出勤前の娘の家にいって1歳半の孫を引き取ってきて一緒に遊びます。これが楽しくってね。孫の写真を微信(中国版LINE)にアップしたりもしますよ。友だちも真面目な政治ネタを書いたり、海外旅行の写真を載せたりしていますね。みんなひまだから、けっこう頻繁に掲載して自慢合戦し合っています(笑)。

夕方は妻と2人で市場に行って夕食の買い出し。夜は娘も家でご飯を食べて帰るので、その片づけまでして孫と娘を送ったら1日が終わり。おカネ?食費くらいしかかかりませんね。実はね、孫の将来のために、せっせと貯めているんですよ」(陳さん)

もちろん、こんなに恵まれた人ばかりではない。内陸部の農家や自営業者などは非常に少なく、3年前に取材した山東省の農家が実家だという上海在住の男性は「親の年金は月に100元(約2000円)しかないので、自分が仕送りしているので大変だ」とこぼしていた。中国の都市と内陸の格差が問題となっているが、年金も同様。また、国営企業などのサラリーマンと自営業者の間では、日本と同じく年金額にもかなり開きがあるようだ。

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