日本人より優雅?定年後中国人の「懐事情」 爆買いする中国人はいかにして生まれたか

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北京や上海などの大都市の場合、都心部の新築マンションは日本円で2億円出しても買えないほど高く、スターバックスで飲むコーヒー1杯の価格も日本より高いが、贅沢品や嗜好品を除けば、地下鉄は2~4元(約40~80円)と格安。自宅があり、毎日自炊して、あまり外出しなければ、おカネがかからない生活を送ることができる。

張さんは大学教授だったとはいえ、堅実な人生を歩んできた「普通の人」の部類に入る。だが、贅沢はしなくとも、その暮らしぶりは、都市部に住む中国人のシニアライフの典型といっていいかもしれない。

昨今、日本を訪れて大量に買い物をする中国人観光客を見て、多くの日本人は「彼らはどうしてあんなにお金を持っているんだろう?」と不思議に思っているのではないだろうか。

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日本人の脳裏にある中国人像は「人民服に自転車姿」という大昔の残像か、メディアで報道される昨今の「金のネックレスをしてBMWに乗る姿」という両極端なものしかない。現実の中国人がどんな生活をしているかという、地に足のついた実態をほとんど知らないからだ。私は著書『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか』の中で、中国人の生の声や生活実態をありのままに紹介しているが、ここでは都市部に住む数人の定年退職者の懐事情について聞いてみた。

むろん、私が取材したのは会社員や教師、公務員など一部なので全体の平均とはいえないが、都市部の“中間層以上、富裕層未満”の人々の実態は、多少あぶり出せるだろう。

日本では個人金融資産の6割以上は一部の高齢者が所有しているといわれており、若者世代はアップアップという状況だが、中国の高齢者はどうなのか。また、その暮らしぶりは都会で働く30~40代の息子・娘たちにどのような影響を与えているのだろうか?

安く払下げられた社宅住まいで、家賃なし!

一人娘(35歳)が東京に住む葉さん(62歳、男性)は2年前に杭州の大手企業を定年退職した。中国では女性は50歳~55歳、男性も55~60歳が定年で、日本よりも早い。彼の年金は月額5000元(約10万円)とかなりいい。妻は工場勤務だったので、年金は多くなく月額2500元(約5万円)だが、合わせて15万円の年金は、彼らにとって十分といえる金額だ。

住宅は社宅を安く払い下げられたあと、それを転売、別のマンションを購入したため、家賃の心配はない

実は、都市部の出身で、公務員だったり国営企業に長年勤めていた人の多くがこの葉さんのタイプに属する。中国で自由に不動産が買えるようになったのはわずか15年前。それ以前は、社会主義体制の下で土地は公有制だった。中国人は職業選択の自由がなく、住宅はすべて「単位」(職場)から無料で支給されるもの(社宅)だった。

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