幸せな晩婚に影を落とす「前妻とカネ」問題 高額の養育費や住宅資金の援助に悶々

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修さんは大企業の管理職であり、弘子さんとの旅行にしかまとまったお金を使わない質素な生活を送っている。迫りくる老後も企業年金があれば生活に困ることはないだろう。とはいえ、蓄えがなければ悠々自適で暮らすわけにはいかなくなる。

「私がこのまま順調に出世して、主人が定年してまったく稼げなくなったとき、今と同じように優しい気持ちでいられるのかな?と考えることもあります」

依存していないから「しょうがないか」と言える

2人のような年の差晩婚夫婦の場合、お金よりも心配なことがあると僕は思う。平均寿命を考えると、修さんは弘子さんより何十年も早く先立つ可能性が高いことだ。この点に関しては弘子さんの見通しは暗くない。

「独身時代の女友だちとは今でも仲がいいからです。独身のままの友だちもいて、『いずれはみんなでグループホームを作ろう』とよく話しています。主人が亡くなって独り身に戻ったら、そこに入ればいいだけです」

修さん自身も弘子さんと常に一緒に過ごすことを求めていない。前妻との破たんした結婚生活では、食事はほぼ100%外で済ませて家には寝に帰るだけの「ほぼ独身暮らし」だったからだ。弘子さんが外で元気に働くことを心から喜んでおり、週に2日でも弘子さんの手料理を食べられたら満足している。平日の多くは外食で、それぞれ別々の相手と会食が入る夜も少なくない。ちなみに、今回のインタビューも問題なく夕食時に弘子さんと会うことができた。

「懸念事項は主人の長女ぐらいです。住宅の購入費だけで済めばいいのですが、子どもができたらまた要求してくるかもしれません。そのときはそのときでしょうがないか、と思うようにはしています」

どんなに相性の良い結婚相手との生活でも、肉親などの問題が絡むと納得のいかない局面もある。それでも「しょうがないか」と笑い飛ばすことができるのは、弘子さんが経済面でも人間関係でも修さんに依存していないことが影響していると感じる。いざとなればいつでも一人暮らしに戻れる能力と心構えを夫婦ともに持っていると、お互いを大人として尊重し合える結婚生活が送れるのかもしれない。
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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