菅首相の採るべき道は「予算制度の全面改革」のみ

菅首相の採るべき道は「予算制度の全面改革」のみ

塩田潮

 菅首相が18日の国会答弁で「財政再建の道筋をつけるところまで」と語った。

 大地震発生から1カ月余が過ぎ、自民党や民主党の反菅派がそろりと再び倒閣に動き始めたが、菅首相は政権担当スケジュールとして、最短でも数カ月を要する復旧・復興・再生の対策と合わせて、持論の消費税増税実現を視野に入れていることを隠さない。実際は絶体絶命のピンチで大地震に遭遇し、「政治休戦」で命拾いをしたが、震災発生直後から大連立の再仕掛けを始めるなど、事情の大変更を見て、新たな延命シナリオに懸命なのは間違いない。

 大連立は不発だったが、「二の矢」として復旧・復興・再生の財源をめぐる増税議論と絡めて持論の消費税増税路線を持ち出し、実現まで菅政権で、と意欲を明らかにした。

 復興財源については、マニフェストの施策向けの財源の転用、新規国債発行、復興基金新設、復興増税などの案が浮上している。だが、国債の信用低下の阻止を考え合わせれば、返済財源を明確にした償還期限限定の特別国債の発行が現実的と判断しているのだろう。菅首相はその返済財源を消費税増税で賄い、そのまま恒久的な消費税率引き上げにつなげるプランを想定して、その道筋をつけるまで政権担当、という絵を描いているようだ。

 だが、復興財源づくりの道はほかにもある。

 民主党がマニフェストで唱えた「国の総予算の全面組み替え」という方法があり、いまこそ好機だ。マニフェストは破綻したと悪評が多いが、ばらまき批判が強い新規政策はともかく、一般会計と特別会計を合わせた総予算の全面組み替えは、破綻ではなく、むしろ民主党政権の努力不足と挑戦意欲の減退が問題で、予算制度の大改革への期待はいまも大きい。

 未曽有の危機の克服が課題となったいま、国民はゼロベースによる再生を覚悟している。そのエネルギーを結集すれば、聖域を突き破る「全面組み替え」も不可能ではない。菅首相は延命策とセットの消費税増税でなく、捨て身で予算改革に挑めば、歴史に名を刻む首相となる可能性があるが、その気配は見えない。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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