ソニー「急回復シナリオ」は課題がいっぱい 5000億円投資で新しい収益柱は育つか

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実際、足元では逆風も吹きつける。為替変動の影響だ。ソニーではこれまで1円円安になると、対米ドルで30億円の減益、対ユーロで60億円の増益効果があった。しかし、ドルの調達費用増加などで、現在は対米ドルで70億円減益、対ユーロで50億円の増益へと悪化。結果的に、年間約1500億円もの減益要因が生じると弾く。

平井一夫社長が就任時に掲げた2014年度までの中期計画が未達に終わったソニーは、今年から出直しの新計画を掲げている。目指すは2017年度に営業利益5000億円以上、ROE(株主持分利益率)10%以上。為替の逆風が吹く中、達成への道のりは平坦とは言えない状況だ。

総額5000億円以上を投資

そうしたなか、吉田CFOが決算会見で強調したのは、投資への積極姿勢だった。「今年は平井(一夫社長)による第2次中期計画の初年度。達成に向け、投資の年という位置づけだ」(吉田CFO)。

ソニーが投資対象として着目するのが、「リカーリング」(継続課金)型のビジネスだ。従来のような製品の売り切り型ではなく、顧客から継続的に収益を上げる事業モデルになる。

テレビ事業も11年ぶりに黒字化した(写真は2013年の製品発表会、撮影:梅谷秀司)

一例が、稼ぎ頭のイメージセンサー。ソニーのセンサーは高機能で代替品が少ないため、スマホの機種変更の際も、継続的に採用されるケースが多い。

「そのほかにも、定額制サービスの『プレイステーションプラス』や、音楽の版権ビジネス、高機能デジカメの交換レンズなども、リカーリングのビジネス。今後これらの分野に積極的に投資していく」(ソニー幹部)。

設備投資などのハード面と、版権取得やネットワークサービス構築といったソフト面を合わせて、前期比2倍以上の5010億円の投資を見込んでいる。

もくろみどおりに花を咲かせ、構造改革を経たソニーの収益柱に育てられるのだろうか。平井社長にとっては、もう失敗が許されない2度目の中計挑戦となる。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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