西日本は、今のままでは復興支援基地になれない

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西日本は、今のままでは復興支援基地になれない

「えっ、どうして?」--。JR西日本は4月上旬、東日本大震災で部品の調達が難しくなったことを理由に、一部区間で運行本数を減らす間引き運転を行った。福島県にある、車両モーターに電流を送る部品の工場が被災したためだ。その後、部品調達は可能と判明、間引き運転は数日で終わった。だが直接被害を受けていないはずの西日本でも「生活の足が止まる」ことで、今回の震災の大きさを多くの人に印象づけた。

鉄道のように西日本経済にも震災被害がジワジワと広がってきている。りそな総合研究所は、震災が関西企業に及ぼす影響についてまとめた。東北・関東との間の仕入れや出荷の落ち込みに伴い、関西での生産減は1700億~1800億円、2011年度の関西GDPを0・3%押し下げる、と推計している。さらに、関東での電力不足や原発事故の長期化で、生産減の規模は上振れする可能性が高い。無傷の西日本、関西経済にも下押し圧力が強まる。

とはいえ、被災地である東北や原発事故で混乱が続く首都圏に比べれば、その圧力は軽微だ。関西社会経済研究所は、大震災を受けて関西経済に求められるのは「短期的には物的・財政支援、被害者の受け入れ。中長期的には生産拠点としての関西の重要性向上、日本経済復興に向けた関西経済の活性化」と指摘する。

海外移転が加速する中 生産肩代わりできるか

震災発生後、阪神・淡路大震災の経験を持つ関西は、結成したばかりの2府5県による広域行政組織・関西広域連合が素早い動きを取った。支援が1カ所に集中しないよう、各府県が担当県を決める「対口支援」と呼ばれる方式を真っ先に導入して、効率的な連携支援を行った。被災者受け入れも早い段階で表明。少なくとも短期的な役割については、果たしつつあるところだ。

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