「紙パック入り」飲料水が日本で急成長の納得理由 G7広島サミットでも採用、鍵は「再生可能資源」

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日本テトラパックの紙パック入りミネラルウオーター
SDGsの達成に向けた企業の取り組みが拡大傾向にある中、とくに脱プラスチックは世界的に推進され、プラスチックを極力使わずに別の素材に代替するケースが増えている。こうした流れを受け、ペットボトルの代わりとして注目されているのが、再生可能資源を活用した「紙パック」だ。かねて牛乳やジュースなどを入れる容器として親しまれているが、最近はミネラルウォーターの容器にも使われ、G7広島サミットや世界陸上でも紙パック入りの水が採用されるなど、関心が高まっている。
紙パック製品で環境課題の解決に挑んでいる企業、日本テトラパックに、環境負荷を減らす取り組みや今後の展望について話を聞いた。

ブランディングにもつながる
「紙パックの水」採用企業続出

ミネラルウォーターといえば、ペットボトル入りの商品を想像する人がほとんどではないだろうか。しかし、いま国内で紙パック入りのミネラルウォーターが急成長しているという。

国内のスーパーやコンビニで販売される紙パックの多くを手がけている日本テトラパックは、2020年からミネラルウォーター向けの紙パックの本格的な展開を開始。22年には出荷実績が前年比で180%の伸びを見せるなど躍進している。

同社マーケティング部 マーケティングマネジャーの一柳氏は、ミネラルウォーター向け紙パック発売の経緯についてこう振り返る。

日本テトラパック マーケティング部 マーケティングマネジャーの一柳亮(いちやなぎ・りょう)氏
日本テトラパック
マーケティング部
マーケティングマネジャー 
一柳亮

「環境意識が高い海外では、15年ごろからペットボトルに代わり、テトラパック製のミネラルウォーター向け紙パックの出荷数が伸びていました。欧州ではホテルで提供される飲料水をペットボトルから紙パックに替えるケースがあったほか、米国では人気俳優が経営する会社が紙パックのミネラルウォーターを発売するなど、脱ペットボトルや環境配慮のトレンドが生まれていました。こうした世界的な潮流を受け、日本でも紙パック入りのミネラルウォーターを広められないかと考えたのです」

しかし、ミネラルウォーター向けの紙パックは、ペットボトルと比較するとスピーディーな大量生産が難しく、コストも割高になる。環境への意識が高い欧米諸国と比べると、日本での普及はハードルが高いのではないかという懸念もあったそうだ。

一方で、当時は日本企業でもSDGsへの取り組みが評価され始めていた頃だった。そこで一柳氏は日本での発売に当たり「まずはホテルなどの環境意識の高い企業に、当社の紙パック入りの飲料水を導入してもらえないか」と考えた。

飲料のビジネスだと、まずはスーパーやコンビニに置いてもらえるようなBtoCの製品から展開するのが一般的だが、自社製品の出荷拡大を目指し、あえてホテルや大学、美容サロンなどに向けたBtoBの製品からの展開を考えたという。「一般的なアプローチとは異なる発想だった」と一柳氏は振り返る。

結果的にはこの方針が奏功し、日本での本格展開後は徐々に認知が広まり採用企業も増加。新たなニーズも生まれているそうだ。

「政府系機関をはじめ、ファッションブランドやカーディーラーなど、環境意識の高い企業への導入が徐々に増えていきました。コストの問題を超越してサステナビリティの取り組みに積極的であることの意思表示や、ブランディングに活用したいという声もあり、これまでの飲料ビジネスとは異なるニーズが見受けられました」

日本テトラパック製の紙パックに入ったミネラルウォーターの写真
すべて日本テトラパック製の紙パックに入ったミネラルウォーターだ

環境に配慮した紙パック、
根拠は「再生可能資源」にあり

1951年にスウェーデンで創業したテトラパックは、現在スイスに本社を置き、世界160カ国以上でビジネスを展開しているグローバルカンパニーだ。

そのグループの一員である日本テトラパックは、紙パックを通じて長年にわたり日本人の食文化を陰で支えてきた。脱プラスチックが世界的な課題になっている現在、改めて紙パックの価値が見直されているのはなぜなのか。一柳氏は、紙パックのメリットについて、原材料に触れながらこう説明する。

「プラスチックの原材料となる石油などの化石燃料は、使い続ければいずれは枯渇する資源です。一方、木材は植林によって再生産が可能なため、持続性のある資源に分類されています。いわゆる再生可能資源です。とはいえ、資源として活用するには木の伐採が必要なため、環境にやさしくないという指摘もありますが、適切に管理された状況下での森林の伐採は決して悪いことではありません。むしろ若い木のほうがCO2をたくさん吸収してくれるので、地球や環境のためには、若い木を育てることが望ましいともいえます」

「当社の紙パックにはFSC®(森林管理協議会)認証マークが掲載されています。また再生可能資源である植物(サトウキビ)由来のポリエチレンの開発・製造も進んでおり、一部の製品では植物由来のキャップが採用されることにより、再生可能資源の使用率63%、二酸化炭素排出量の削減率7%を実現しています。加えて2023年春からは学校給食向け牛乳用紙パックのコーティングにも使われています」

さらに、同社の紙パック製品の「テトラ・プリズマ®アセプティック容器 330ml」は、ペットボトルやアルミ缶と比較し、二酸化炭素排出量(換算値)が大幅に削減できることも実証済みだ。

下段左がテトラ・プリズマ®アセプティック
下段左がテトラ・プリズマ®アセプティック

G7広島サミットでも採用
目標は「30年末までにシェア率3%」

紙パックのミネラルウォーターは、国際的なイベントでの採用も増えている。2023年5月に開催されたG7広島サミットの会議では、各国首脳の前に置かれ脚光を浴びた。

G7広島サミットでの各国首脳の机上に紙パック入りミネラルウォーターが載っている写真
出典:日本国外務省

ほかにも、陸上競技の世界大会でスポーツ選手が紙パックのミネラルウォーターで喉を潤すシーンが報道されるなど、今やサステナビリティの具体的な行動や意思表示のアイコンとして存在感を発揮している。

今後の展望について、一柳氏は「BtoCの製品を本格的に増やしていきたい」と力を込める。

「23年9月には、パリ発のオーガニック・スーパーマーケット『Bio c’ Bon(ビオセボン)』が、弊社として新しいサイズ展開となる500ml紙パックを採用したオリジナルデザインの海洋深層水を発売予定です。環境意識の高い消費者に対する、新しい選択肢になればと考えています。また、サステナビリティ意識の高い多くの企業様にも興味を持っていただきたいです」

最終的なビジネスとしては「30年末までに、国産ミネラルウォーター市場で紙パックのシェア率3%が目標」と意気込む一柳氏。紙パックは、それ自体がエコなのはもとより、サステナブルな社会への転換を促すツールの一つだといえる。日本テトラパックは、これからも持続可能な紙パックを世の中に提供するための先進的な取り組みを続けていく。

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