特定原付「7月解禁」で電動キックボードどうなる よくある2つの疑問と解決すべき3つの課題

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電動車いすでは近年、これまでの医療機器というイメージを刷新するような、より幅広い高齢年齢層を念頭に置いたファッション性を重視する商品も登場しており、自動車新車販売店での取り扱いが増えるなど、需要が拡大し始めているところだ。

WHILLの電動車いす、「Model S」の商品発表会にて(筆者撮影)

こうした「歩行者と同等の扱い」となる乗り物、歩行者、自転車等、そして「特例特定原付」が一部の歩道で共存するためには、互いがモラルを重んじて歩道を通行することが求められるのは当然である。

「モノありき」で進んだために

2点目は「これまでにない法整備」についてだ。

特定原付は、道路交通法と道路運送車両の保安基準に係わる省令の改正によって誕生した。つまり、「モノありき」での議論が主体であり、「走行における社会実状」に対する議論が事実上、後付けになっている印象がある。

「走行する場所」については、現状での電動キックボードシェアリング事業での実績を鑑みると、需要が多いのは比較的交通量が多い都心になるだろう。

都市の道路を走る電動キックボード(’90 Bantam / PIXTA)

だが、都心部では自動車専用道などの整備が行われている場所が限定的であるなど、または歩道の拡張が物理的に難しい場合も少なくない。そうなると、道路法についても何らかの新しい考え方を取り入れることが考えられる。

また、都心部に限らず、観光地、地方部、中山間地域などでの利用については、公共交通として観点も必要となるはずだ。直近の通常国会では、地域公共交通活性化再生法が改正され、公共交通の「リ・デザイン(新しい姿への転換)」に対する議論が、全国各地で高まっている。

これまでも、いわゆるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)という施策を含めて、電動キックボードや歩行領域の乗りモノを使った、「ラストワンマイル・ファーストワンマイル」といった短距離の地域移動が議論されてきた。だが、多くのケースが「実証のための実証」にとどまっている印象がある。

特定原付には、さまざまな課題があることを十分承知したうえで、地域公共交通活性化再生法の有意義な活用を、地方自治体が議論することも考えられるはずだ。さらには、フランスにおけるモビリティ基本法など、新しいモビリティを総括的に考える新しい法律の制定も考えるべきかもしれない。だが、そこにも大きな課題がある。

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