アメリカが「プーチンの弱体化」に危機感抱くワケ アメリカ政府関係者が最も懸念していること

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モスクワに向かう途上での部隊間のにらみ合いは、短時間ではあったものの、ロシアにおける権力闘争としては、1991年の強硬派によるミハイル・ゴルバチョフ元大統領に対するクーデター未遂、および1993年のボリス・エリツィン元大統領と議会の間の抗争以来最も劇的なものとなった。ただ、それら過去の事件の時とは異なり、今回の抗争に関してアメリカはどちら側にも肩入れしていなかった。プリゴジンもプーチンもアメリカの味方ではない。

バイデンはこの危機に対応しないという対応をし、発言ではなく用心を選んだ。もし何か言えば、プーチンが「これはすべて外国の陰謀だ」と主張するための材料を与えてしまう恐れがある。これは、国内で問題が起きた際にロシア政府がよく最初に発するフレーズである。

機敏に情報収集に動いたバイデン政権

バイデンはキャンプ・デービッドに向かう予定を遅らせ、ホワイトハウスのウォードルーム(本物が改装されている間の臨時のシチュエーションルーム)の最高顧問らとの安全保障ブリーフィングをリモートで招集するとともに、イギリス、フランス、ドイツの首脳らとも電話会談を行った。

ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官はバイデンに同伴してキャンプ・デービッドに行くために、ウクライナ支援を呼びかけるためのデンマーク訪問をキャンセルし、出席を予定していた会議にはリモートで参加した。

統合参謀本部議長のマーク・ミリー陸軍大将も同様に、イスラエルとヨルダンへの訪問を延期した。しかし、バイデン政権はウクライナに対するアメリカの支援を改めて表明する以外には沈黙を保ち、事態の展開を静観しつつ、現在起こっていることについての知見を得るためにインテリジェンスの情報を精査した。

バイデン政権はかなり前から、このようなシナリオが発生した際の緊急時対応計画を立てていたが、24日には他の誰もと同じように、ロシアから確実な情報を入手してその意味を解釈しようと奔走した。従来のインテリジェンス情報源だけでなくソーシャルメディアなどのオンラインソースにも頼ってである。

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