日銀金融政策決定会合で追加緩和はあるのか 30日の会合で緩和がなければ相場は暴落?

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実体経済においては、長期金利が借り入れ金利のベースになっているから、むしろ直接的な景気刺激策になるのではないか。良いことづくめではないか。量的緩和で得体の知れない未開のリスクを背負うよりも、王道に近い金利で行くべきではないか。

日銀の「窮地スパイラル」が始まる?

長期金利ターゲットの理論的な問題点は、第一に、日銀が政策手段とするべきものは、自身でコントロールできるものであるべきだが、長期金利はそうではないことだ。長期金利とは、短期の金利の足し算である。短期の金利がコントロールできるならば、インフレや期待インフレと違ってコントロールできるのではないか、と思うが、それは間違いだ。

なぜなら、長期金利は短期金利の足し算ではないのである。短期の足し算に、将来という時間のリスクを足さなくてはいけないのである。そして、そのリスクに対する値付けを行っているのが、長期国債市場なのである。

日本政府の財務リスク、日銀の政策変更リスクを除いた、本来であれば、市場経済全体の、金融市場も実体経済も含めた、経済全体の将来へのリスク見通し、リスク許容度の値付けを行っている市場であり、経済においてもっとも重要な市場なのである。だから、この市場の機能を失わせるような、長期金利コミットメント政策は、理論的に行うべきではないのである。

私が、河野龍太郎氏の考え方と唯一違うのは、「長期金利ターゲット」が望ましくないことを日銀は分かっているはずで、黒田氏は、長期金利ターゲットの問題点をそれほど重く考えない可能性があるが、これは日銀のスタッフとは見解が分かれることになるのではないか。

このとき、日銀の現在の一体感が失われ、いよいよ、黒田スタイル、バズーカ緩和と呼ばれる手法にきしみが生じ、デフレスパイラルならぬ、日銀「窮地スパイラル」が始まるのではないか。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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