「当社の商品がSNSにUPされない」と嘆く人の盲点 問題は商品やサービスではなく「過程」にある?

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
拡大
縮小

例えばノンカフェインのコーヒーを売るときに、ただ「ノンカフェイン」と訴求するのではなく、「コーヒー好きだけど、妊娠中でカフェインを摂れない方へのプレゼントに」とメッセージングする。あるいは、「髪がまとまるシャンプー」ではなく、「毎日忙しくてヘアケアの時間が取れないあの人へ」と伝える。そうして「これをあの人にあげたら喜んでもらえるだろうな」と訴求することができます。

それに、プレゼントはあげる人、もらう人の外にも広がります。

例えば、電車の中で花束を持っている人を見て、「誰かにもらったのかな」「誰かにプレゼントするのかな」「送別会かな」と、前後のストーリーを想像することがあるのではないでしょうか。また、誰かにプレゼントをもらったエピソードや、その画像をSNSにアップすることも多いと思います。

プレゼントをあげる、もらうということに対して生まれる喜びだけではなく、プレゼントを渡している姿を見て、 また別の共感が生まれるのです。

コミュニケーションという視点では、企業と消費者間のやり取りも大切になります。

SNSの企業アカウントとして有名なのが、SHARP社のTwitterアカウントです。まだTwitterがそれほどビジネスに利用されない時期から運用に注力していたことで、抜きん出た存在になっています。いわゆる先行者利益であり、いまからほかの企業が超えるのはまず無理といっていいでしょう。市場の特性上、後発者は圧倒的に不利です。

ただ、このように、企業が公式アカウントを通して消費者とつながるという構図が、これから一気に変わる可能性があると考えています。ひと言でいえば、「コミュニケーションアカウントをつくる」という発想です。

これから企業に必要なのは、公式アカウントや広告運用のためのアカウントではなく、消費者とコミュニケーションを取るためのアカウントです。

ユーザーからリアルな情報が集まる

例えばお茶のメーカーがInstagramのストーリーズで「次に欲しいフレーバーは何ですか?」と質問する。それにユーザーが「桜の香りが欲しい」と回答します。簡易にリアルな情報を集めると同時に、ファンコミュニケーションができます。

ただ、企業が直接消費者とつながろうとすると、どうしても宣伝や広告の雰囲気が出てしまいます。そこで必要なのが、企業と消費者の間をつなぐ存在です。

【Amazon.co.jp 限定】エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール(特典「『エモシチュエーション』の発想シート」データ配信)
『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』(クロスメディア・パブリッシング)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

企業の言いたいことを適切に翻訳し、消費者へ伝える。また、消費者の考えていることを理解して、企業に伝える役割です。

企業と消費者の両方とやり取りできるのが、インフルエンサーと呼ばれる人たちです。彼らは商品やサービスを使った感想をハッピーな表現に置き換えて発信し、共感を呼び込むスキルを持っています。消費者にとっては、自分の好きなインフルエンサーによるUGCが、購入の強い動機になるわけです。

企業が自分たちでインフルエンサーを生み出すのでもいいですが、それでは難易度が高くなります。そのため、企業がインフルエンサーに発注する。インフルエンサーを介して消費者と企業が繋がる。そうした構図になっていくように思います。

今瀧 健登 僕と私と株式会社CEO、一般社団法人Z世代代表、Z世代の企画屋

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いまたき けんと / Kento Imataki

1997年生まれ、大阪府出身。横浜国立大学在学中に起業。花屋のコンサルティングやグラフィックデザインを担う。2020年、大学卒業後に教育コンサルティング会社に就職。同年に「僕と私と株式会社」を設立し、Z世代向けのマーケティング・企画UXを専門に事業を展開する。プロデュースしたマッチングアプリ「タップル」の公式TikTokアカウントでは、開設1年でフォロワー約35万人、総再生回数は2億回を突破している(2023年3月末現在)。
「NewsPicks」 U-30プロピッカー、「日経クロストレンド」での連載のほか、Z世代の代表として多数のメディアに出演。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT