本格始動する「トヨタ新設計方式」の行方

競争力強化の効果は未知数

 4月28日、車づくりの刷新とコスト削減をめざすトヨタ自動車の次世代設計・開発方式「TNGA」が新たな展開期に入る。世界の生産ラインを徐々に新方式に変更し、同方式による初の新型車となる次期「プリウス」を年内に発売する。写真は、トヨタのロゴ、2014年11月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 28日 ロイター] - 車づくりの刷新とコスト削減をめざすトヨタ自動車<7203.T>の次世代設計・開発方式「TNGA」が新たな展開期に入る。世界の生産ラインを徐々に新方式に変更し、同方式による初の新型車となる次期「プリウス」を年内に発売する。

しかし、新方式への切り替えには時間がかかる見通しで、没個性と言われるトヨタ車のイメージ改善や収益への貢献度も含め、同社の「製造革命」の成果は未知数との見方も少なくない。

TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)では中型車、小型車など車のサイズごとに車台(プラットフォーム)を共用化し、複数の車種を一括して企画するなど設計から開発、生産、人員配置まで車づくりに関わるすべてのプロセスを変える。今後は世界に広がる工場すべての生産ラインを新方式に対応させ、2020年ごろまでに世界で売り出す新車の半分がTNGA採用車になる見通しだ。

トヨタはリーマン・ショックが起きた2008年までは、販売台数の拡大を優先し、設備投資の増額を続けていた。しかし、その後、大量リコール(無償回収・修理)問題を起こしたことをきっかけに「量より質」に転換、設備投資も抑えており、15年は08年の実績より半減できるめどをつけている。

TNGA導入後は部品の共通化で新たな金型が必要になるなど、一時的に新規投資は増えるが、それでも08年の投資レベルは下回る見込み。同時に、車台を低重心化してデザイン性や操縦性を高めるなど、見た目も商品力も卓越したトヨタ車の実現をめざす。

「世の中に魔法はない」

魅力的な車づくりと製造コストの低減。トヨタがTNGAで実現をめざすのは二律背反ともいえる難しいテーマだ。

「今まで以上に車のデザインと走りの性能に磨きをかける。その上で賢く作る方法を考えようというのがTNGAの本質」。豊田章男社長は3月下旬、初めて開いた個人投資家向け説明会でこう熱く訴えた。部品共通化で原価低減を図り、開発工数を現状から2割減らす。その結果として浮いた時間や人材、資金などの経営資源を次の技術開発などに振り向け「商品力強化とコスト削減を両立させる」(トヨタ幹部)。

TNGAをどう評価するか。トヨタウォッチャーの見方はさまざまだ。同社が先月下旬に開いた説明会を受け、株式アナリストの間では「中期的な業績拡大への安心感が一段と高まった」(桾本将隆・野村証券アナリスト)という好意的な評価が広がった。

すでにトヨタは設備投資削減に積極的に取り組んでおり、TNGA導入に伴う一時的なコスト増を吸収できる環境も整った。杉本浩一・三菱UFJモルガンスタンレー証券シニアアナリストは、工場新設の初期投資が08年比40%減、車両切り替え時の設備投資が同50%減、製造原価も10年比15%削減にめどが立っているとの見通しを踏まえ、「設備投資額は前回のピークである約1.5兆円(06年3月期から08年3月期)を大きく下回る可能性が高い」と指摘する。

しかし、TNGAの導入で競争力がどこまで高まるのかは不透明だ。トヨタは導入による収益改善効果など具体的な数字はまだ公表していない。一般的な試算では、トヨタ全車種1台あたりの利益は20万円程度だが、例えば、利幅の少ない小型車「ヴィッツ」が「1台あたり利益でTNGA後と前とでどのくらい変わるのか知りたい」と岡地証券(名古屋)の森裕恭・投資情報室長はいう。

「世の中に魔法はない。TNGAが魔法の新技術だとか革新的なことだとは思っていない」。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表はTNGAについてこう話す。量を追い続けて勝ち過ぎた「トヨタは(デザインや走りでの)努力を怠り、世界に遅れている。TNGAでようやく世界のレベルに追い付いてきたということだろう」。

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