名古屋鉄道、「オリジナル土産物店」実現の舞台裏 地元メーカーとコラボ、3カ月で3割を入れ替え

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棚橋さんたちは新業態店のコンセプトを「地域を盛り上げたい」で一致。しかし、名古屋で暮らす人々は、「名古屋には何もない」と自虐気味に言いがちである。はたして当地には本当に何もないのか。それを検証することにした。

「魅力があるのに発信できていないだけではないかと思ったんです。まずは名鉄からカッコいいとかオシャレとか面白いというイメージを加えていきたいと思いました。地域を盛り上げるには、そこで暮らす人々の気持ちをアゲることではないかと思い、『アゲる』にかけて贈り物、つまり、お土産物を売るお店にしようと」(棚橋さん)

「名鉄商店」外観(筆者撮影)

名古屋駅界隈には名鉄百貨店を含めてお土産物を扱う店は沢山ある。他店でも扱っている商品を売ったところで名鉄のイメージを変えることはできないと判断し、扱う商品はすべてオリジナルという方針を打ち出した。

上司や同僚、取引先、他のグループ会社から「本当にできるのか?」「無理だろう」と否定的な意見が多く聞かれたが、方針を堅持。3月末に事業計画がまとまり、オープンは2022年12月1日に決定した。4月からわずか8カ月で商品やブランディングの検討や取引先の開拓、SNSやHP、ECサイトの開設、店舗デザイン、アルバイト採用などすべてをこなさねばならなかった。

「私たちだけでは絶対に無理でした。幸いなことに、ファミリーマートや成城石井などでフランチャイズ事業を中心にオペレーションを担ってきたメンバーが協力を買って出てくれたんです。オペレーション業務の構築のみならず、内覧会の準備や荷受け、開業後の裏方サポートも自主的に手伝ってくれました。おかげで私たちは商品開発とブランディング、店舗開発に集中することができました」(棚橋さん)

商品開発は、愛知県と岐阜県の名鉄沿線を中心としたメーカーや店の中から自分がよいと思うものを400軒ほどリストアップしたほか、商工会議所や地方銀行、グループ会社の取引先にも協力を仰いだ。

うなぎとお茶のコラボ

そんな苦労が実り、昨年12月1日のオープン時には70アイテムを用意することができた。その一つひとつに開発までのストーリーがある。例えば、「香る うなぎ茶漬け」。養鰻が盛んな西尾市一色町にある「うなぎ割烹 みかわ三水亭」と名古屋市熱田区に本店がある1916年創業の老舗お茶専門店「妙香園」とのコラボで誕生した人気商品である。

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