知られざる国際弁護士軍団、FMLCって何だ? 重要性高まる国際金融規制の調整役

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ではいったい何ができるのか? FMLCは4つの重要な提案を行っている。

第一に、FSBは新しい規制を導入する際に全加盟国が順守すべき原則を周知させ、各国間のバラツキを抑える手助けをするべきだということ。

第二に、既存の規制の矛盾に対処するため、FMLCは「規制の競合」の枠組みを構築し、国際的紛争においてどの法体制の管轄とするのか、たとえば国際企業の本国の法体制の管轄とするのか、あるいは同企業の現地法人がある国の法体制の管轄とするのかを判断することを提案している。こういった紛争において、第三者国際組織を仲裁者とする以外の方法ではG20加盟国の支持が得られない、と報告書では説明されている。

G20首脳間の連携強化が必須

第三に、FSBの権限の拡大を提案している。同理事会は2009年に旧金融安定化フォーラムから非公式に発足し、ようやく最近、独立法人となった。国家間での法的な不一致に対処する原則を確立するなど権限を強化することで、規制のバラツキに起因する問題に対処できるようになるだろう。

そして最後に、常設のG20事務局を設立し、G20首脳間との連携強化を呼びかけている。

規制の一貫性のなさはトピックとしてはエキサイティングなものではないかもしれない。ゆえにFMLCのリポートは注目されてこなかったのだろう。だが、08年の世界金融危機がわれわれにまざまざと見せつけたように、それにより市場の機能が失われ、それぞれの規制機関の責任や役割のあいまいさが、破綻企業に起因する問題への対処を難しく、あるいは不可能にさえしてしまう。

私が英国の規制機関である金融サービス機構の理事長を務めていた頃、弁護士というものはいつも脇に控えていて出しゃばるべきではない、と考えていた。だが、彼らの声にはつねに耳を傾けなければならない。FMLCの影響力ある弁護士たちが今、声を上げている。世界は彼らの声を聴くべきだ。

週刊東洋経済2015年5月2日・9日合併号

ハワード・デイビス 英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス前学長

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英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス前学長。監査委員会、英国産業連盟、イングランド銀行副総裁、金融サービス機構(FSA)初代理事長などを経る。

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