「りくりゅう」所属、木下グループの選手支援力 フィギュアスケートファンには知られた社名

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明るい笑顔と、お互いへの信頼が感じられる氷上でのコミュニケーションが印象的な「りくりゅう」ペア。会場で販売された公式パンフレット掲載の写真やコメントにも、2人の仲の良さがにじみ出ていた。「スターズ・オン・アイス ジャパンツアー2023」2023年4月6日 横浜公演初日(撮影:梅谷秀司)

木下グループ所属の「りくりゅう」ペアが、2022-23年シーズンに「年間グランドスラム」を達成したのだ。国際スケート連盟の主要3大会である「グランプリファイナル」「4大陸選手権」「世界選手権」を1シーズンで制するのは、日本勢で初となった。

支援にどの程度の予算を割いているかは気になるところ。だが、「契約内容は個々の選手で異なり具体的にお答えするのは難しい」とのこと。ただ、「アイスショーの協賛、主催も含め、支援は営利目的ではありません。当社の業績がよい時もそうでない時も支援を継続してきました」という。

「スターズ・オン・アイス ジャパンツアー」には、2011年に「木下工務店」として特別協賛したのが最初だった。木下グループは2011〜2018年の8回にわたって「特別協賛」。2019年には札幌と金沢での公演を、2021年と2022年には八戸公演を「主催」、2023年のスターズ・オン・アイスは全公演に「主催」として参加した。

スターズ・オン・アイスの開催に当たっては、主催者や協賛者での会議が毎年、大小いくつも行われるという。世界のトップスケーターらが集まるアイスショーの出演者はどのように決まっているのか。
 
「もちろん、各主催企業に『こういう方に出てほしい』という希望はあると思いますが、スケーターの皆さんのスケジュールや体調もありますし、つねに思いどおりに進むわけではありません。企画担当でスポーツマネジメントを専門とするIMGが、調整役を担っています」

 なお、選手支援やアイスショーの主催などによるフィギュアスケート支援は現在、同社広報室メンバーのうち数人が、時期ごとの繁忙度に応じて担当しているという。

バナータオル販売でも応援

木下グループは2022年12月から、社内の発案で「りくりゅうペア応援バナータオル」を販売している。

古くからフィギュアスケートの会場では、スケーターの名前やメッセージが大きく描かれた布や紙(「バナー」と呼ばれる)を演技後のリンクに向けて掲げ、応援の気持ちを示す行為が盛んだ。コロナ禍の影響で声出し応援のできなかった時期は、拍手とバナーがさらに重要なものとなった。

見どころの多いペア演技だが、リフトやスロージャンプなどの技はやはり目を引く。「スターズ・オン・アイス ジャパンツアー2023」2023年4月6日 横浜公演初日(撮影:梅谷秀司)

「目に見える形での応援ということで、ずっと公式応援タオルを作りたいと考えていました。手作りバナーや専門業者の特注品はハードルが高いので、公式グッズとして買いやすい値段で販売しようと。りくりゅうカラーのブルーのタオルでファンの統一感も出ます」

世界選手権では、客席に青いタオルがずらりと掲げられ、りくりゅうペアの2人もそれを喜んだという。タオル購入者が希望すると自身の名前が掲載される特設ページを木下グループのウェブサイトに設けた。

タオルは税込3300円で販売している。その売り上げは全額2人の活動支援金に充てられる。ファンが購入代金として支払った全額がそのまま2人に届く。

つまり販売した数だけ木下グループが費用を負担する仕組みだ。さらに同社は2023年4月、年間グランドスラムを達成した2人に1400万円ずつの報奨金を贈っている。

ファンやメディアからの注目度も高く、まさに「りくりゅうフィーバー」だが、そこに至るまでには木下グループによる長年の地道な支援があった。フィギュアスケートには個人で賄うには重い費用がつきものだ。練習場所の確保や国際大会への出場費用、コーチやトレーナーへの支払いなど、何かとお金がかかる。支援企業が果たす役割は大きい。

山本 舞衣 『週刊東洋経済』編集者

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やまもと まい / Mai Yamamoto

早稲田大学商学部卒、2008年東洋経済新報社に入社し、データ編集、書籍編集、書店営業・プロモーションを経て、2020年4月育休を終え『週刊東洋経済』編集部に。「経済学者が読み解く現代社会のリアル」や書評の編集などを担当。

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