「結果を出す」超一流は自信家でわがままだ ACミラン本田圭佑が、本番に強い理由

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たとえばムンターリは、左利き(イタリアでは、マンチーノといいます)です。このタイミングなら右脚で蹴った方がいいだろうという場面でも左脚に持ち替えてシュートします。彼は右脚が、下手なわけでもないのに、それでも左脚を使います。左脚で、失敗しても、決して右脚で蹴るべきだったという反省はしません。日本人にはこのような感覚はないように感じますが、ミランの多くの選手は、この発想です。

筆者の推測では、「右脚を使うこと」は、自分の方針を否定することにつながるのではないでしょうか。両脚が平凡なキックしかできないよりも、「左脚は誰にも負けない」という自信を磨き上げることが、ムンターリのプレーを支えているのです。

インザーギは2007-2008シーズン、リーグ戦ではわずか2得点と成績を上げていませんでしたが、チャンピオンズリーグ決勝で先発した彼は、1対1からの同点ゴール、残り10分を切った場面での、勝敗を決定づける2点目のゴールを決め、ミランに勝利をもたらしました。

なぜインザーギはリーグ戦の不振を引きずらず、チャンピンオンズリーグの決勝という大一番で結果を出すことができたのでしょうか。

大舞台に強いインザーギの秘密

それは彼が自分の長所、勝負所を知っていたからです。そして、彼はただそれに集中したからです。CLで戦う超一流クラブのディフェンス選手は、国内リーグで戦う選手以上に駆け引き、フィジカルの面で優れている選手たちばかりです。インザーギの得意なプレーは、駆け引き。相手の力を利用することです。相手ディフェンダーが次に何をしたいのか、何を仕掛けてくるのかをはっきり示してくればくるほど、彼はそれを利用して相手を欺き、得点するという能力を持っています。相手の仕掛けにまんまと引っかかった振りをして、その逆を取るということです。

したがって二流のディフェンダーを相手にしているときは、ギリギリの駆け引きができずに彼の力が発揮しきれないことが多いのです。

ある試合のハーフタイムに彼が味方選手に対してこう注文していました。

「なぜボールを出してくれないんだ」

それに対して、味方選手が「そのタイミングではオフサイドになってしまうから出したくても出せないんだよ」と答えると、彼はすかさず、

「オフサイドでもいいから出してくれ! 4回オフサイドになっても1回オフサイドぎりぎりでボールをもらえれば1点だよ。それにボールを出してくれなければ、相手と駆け引きができない。これじゃ相手が何を意識してポジションを取っているかがわからないんだ」

というのです。相手のディフェンダーが優秀であればあるほど、その逆は取りやすいと彼はいっています。練習試合やリーグ戦で相手が弱いときには全くさえないけれども、相手が強くなる大舞台になればなるほど秀でたプレーを魅せてくれる。それがインザーギでした。

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