稲盛和夫が社員の心を掴んだ「カラオケの曲」 信用が「尊敬」まで行くとステージが変わる

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2022年8月、90歳で逝去した稲盛和夫氏。写真は2008年当時(撮影:神崎順一)

他の会社の人は、私の誘導についてこられて、「関さん、これはすごいね」とか「よくあんなのできるね」とか、そんな評価をもらって、「ありがとうございます」と終わることがほとんどでした。

ところが稲盛さんは、見方が違う。一通り行ったあとに、また戻ったりする。「関さん、あそこをもう一度見せてほしい」。あるいは「どうしてこれはこうなるのか」と質問したり。ああ、この人は現場をやってきた人だな、とすぐにわかりました。

とにかく微に入り細を穿ち、知ろうとする。大会社の社長でこんな人がいるんだ、と初めて知って驚きました。

「これはね、決めた。頑張りましょう。結婚です」

その後、サイバネットの幹部は京都に集められて、京セラを訪問することになりました。何をするのか、私たちは聞かされていない。先に社長が稲盛さんと話をしている間、会議室のようなところで待っていました。ずいぶん長い時間に感じられました。

それで夕方になって、どうぞ、と案内されたのが、だだっ広い和室なんですよ。これはなんだと思ったら、お酒がテーブルの上にずらりと並べられている。何が始まるのかと、びっくりしました。

テーブルは4つに分けられていて、それぞれ京セラの幹部が入ってきました。いわゆるコンパですね。そして、人がどんどん入れ替わって、稲盛さんからもいろいろ質問を受けて。

工場のこと、部品のこと、社員のこと、いろいろ聞かれて一生懸命、私からも訴えました。社員を安心させてやりたくて、なんとか京セラに加わりたかったですから。

時間が経過して、稲盛さんが「よーし」と立ち上がって、こう言いました。

「よし。サイバネットの人たちはみんないい人だ。これはね、決めた。やろう。頑張りましょう。結婚です」

結婚は、お互いに知らない人同士が一緒になっていくわけだから、お互い努力しないといけない。これを強調されました。私は、これで社員がみんな喜んでくれる、とうれしかった。

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