トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下

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大島氏を独立社外取締役にカウントしない場合、トヨタの取締役会は東証がプライム上場企業に求める「独立社外役員が3分の1以上」の基準を満たさなくなる。

「十分な数の独立した社外取締役がおらず、客観性や独立性、適切な監督を行う能力に深刻な懸念を抱く」。グラスルイスはそう指摘し、取締役会議長として責任を負う豊田会長の再任に反対すべきとした。

グラスルイスのリポート
グラスルイスは豊田会長の取締役再任に反対(AGAINST)することを推奨していた(画像はグラスルイスのリポートの一部)

総会前には、アメリカ最大の公的年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が、取締役候補10人のうち豊田会長や佐藤社長ら8人に反対票を投じたと公表していた。問題視したのは、やはり取締役会の独立性だ。

カルパースは2000年代前半、企業統治の不備などでアメリカのウォルト・ディズニーに圧力をかけ、経営トップを追い詰めた経験を持つ「物言う機関投資家」として知られる。一方、その姿勢を「ドグマチック(独断的・独善的)」と評する市場関係者も少なくない。

実は、カルパースは昨年も豊田会長をはじめトヨタの取締役候補9人のうち7人に反対票を投じていた。それを踏まえると、今年の賛成率低下は、グラスルイスによる反対推奨の影響が大きく出たと言えそうだ。

運用会社が気候変動関連で株主提案

今年のトヨタの総会でのもう1つの注目点は、欧州の機関投資家が行った株主提案だった。デンマークの年金基金AP、ノルウェーのストアブランド・アセット・マネジメント、オランダのAPGアセットマネジメントが共同提案していた。

定款を変更し、「気候変動関連の渉外活動が及ぼす当社(トヨタ)への影響とパリ協定の目標との整合性に関する評価及び年次報告書の作成」などを規定に追加することを求めたのだ。

この提案にグラスルイスは反対を推奨したのに対し、グラスルイスと並ぶ議決権行使助言会社のISSは賛成を推奨。カルパースも賛成票を投じていた。

会社側は「このような課題に対し、(中略)柔軟かつ多様な経営判断を行い、(中略)速やかに実行していくことが求められます」「定款には(中略)規定せず、現行の定款を維持したい」と、株主提案への反対を表明していた。

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