ガーシー逮捕で「"高額"動画広告収入」はどうなる 推定1億は「犯罪収益」として差し押さえなるか

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とはいえ、このような収益も、実質的に動画配信自体が違法と言えれば、犯罪収益に該当する可能性があります。

たとえば、動画配信での脅迫発言の割合、頻度、性質、目的などから、それぞれの脅迫発言にとどまらず、ガーシーによる動画配信自体が被害者を畏怖させるものといえるような場合には、実質的にその動画配信自体が違法といえ、それによって得た収益も犯罪収益と評価できると思われます(図3参照)。

(画像:弁護士ドットコムニュース)

一連の動画配信の「目的の同一性」がポイントに

また、単なる脅迫罪ではなく、「常習的」脅迫罪で検挙していることに着目すると、単にそれぞれの脅迫発言を個別の犯罪行為と捉えるのではなく、一連の脅迫発言を含む動画配信を繰り返していた行為を一体の犯罪行為として捉えることができれば、同様に、一連の違法な動画配信自体によって得た犯罪収益と評価できると思われます(図4参照)。

(画像:弁護士ドットコムニュース)

このように複数の行為を一体の犯罪行為と捉えられるかどうかは、一連の動画配信の「目的の同一性」がポイントになってきます。

たとえば、視聴率を稼いで広告収入を得ようなどという同一目的に基づき、こうした動画配信を繰り返していたと言えれば、一体の犯罪行為と捉えやすくなります。そのため、今後の取調べにおいては、一連の動画配信の「目的の同一性」についても追及対象になってくるでしょう。

西山 晴基(にしやま はるき)弁護士
レイ法律事務所
東京地検を退官後、レイ法律事務所に入所。検察官として、東京地検・さいたま地検・福岡地検といった大規模検察庁において、殺人・強盗致死・恐喝等の強行犯事件、強制性交等致死、強制わいせつ致傷、児童福祉法違反、公然わいせつ、盗撮、児童買春等の性犯罪事件、詐欺、業務上横領、特別背任等の経済犯罪事件、脱税事件等数多く経験し、捜査機関や刑事裁判官の考え方を熟知。現在は、弁護士として、刑事分野、芸能・エンターテインメント分野の案件を専門に数多くの事件を扱う。

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