なぜ女性たちは「ぶら下がり社員」になるのか ギスギス職場は誰のせい?

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時間制約のある社員が入ることによっても同じことが起こります。20ずつこなしていた業務が1人だけ16になってしまい、のこり4人が21ずつ仕事をしているとしましょう。

少なくとも残業代が浮いている分、残り4人の残業代が増えていれば、そこまで不満は高まらないかもしれません。16しかこなせていない人の給与がその分減っていることが分かればまだ不公平感は少ないかもしれません。

でも、今書いてきたようには仕事の成果はきれいに測れるものでもないでしょうし、成果と報酬の関係もあいまいな組織も多いでしょう。そうするとしわ寄せを受けた社員には不満がたまることになります。

本来は、評価と報酬の問題

これは本来、評価と報酬についての制度の問題だと思います。根本的にこの問題を解決するには、<人事評価制度や人員配置の考え方そのものを大々的に見直す>か、<管理職の業務の配分と報酬のつけ方に対する権限を強める>必要がありそうです。

これは経営戦略にかかわりますから、企業のトップに理解をしてもらわないと簡単には変わらないかもしれません。でも、ダイバーシティ推進はCSRや福利厚生でやることではありません。育児中の社員にも、そしてそれ以外の周囲の社員にも、モチベーションを維持して働いてもらうことは、経営問題そのものです。

そのために、どのように評価して、どのように報いるか。今回は仕事の量の増減と評価、報酬の問題を扱いましたが、次回は引き続き、この「育児中社員の処遇問題」について、仕事の「質」をどう評価すべきかについて考えていきたいと思います。

中野 円佳 東京大学男女共同参画室特任助教

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なかの まどか / Madoka Nakano

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社入社。企業財務・経営、厚生労働政策等を取材。立命館大学大学院先端総合学術研究科で修士号取得、2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程(比較教育社会学)を経て、2022年より東京大学男女共同参画室特任研究員、2023年より特任助教。過去に厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいのか』『教育大国シンガポール』等。

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