中国人の大半は歴史問題など気にしていない 日本人は「本当の中国」を知らなさすぎる

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しかし、日本にはこうした情報が伝わっていないためか、南京に進出する日本企業はほとんどないし、日本料理店も少ない。しかし、実際には現地の人たちは、中国のほかの街と同じように日本食を好きな人が多く、日本料理店をつくってほしいと思っているんです。

中村:日本人は、よく情報を集めないで、自分で自粛してしまうところがありますね。レアアース関係の人たちと中国各地を視察する際にも、「南京だけは行かなくともよいのでは」「あの街に工場をつくるなんて難しいよ」と言う人はけっこういますよ。

それでも私が強引に連れていって、夜に現地で宴会になると、皆、大歓迎してくれます。ところが宴もたけなわのところで、日本人のほうから「昔、ここで大虐殺をしてしまって」などと話をし始める。「なんで今、そんな話をするのか」とガッカリしてしまうことが何度もありました。

実際に過去を問題にしている中国人は少ない

小林:私は南京に何度も行っていますが、一度も嫌な思いをしたことはないですよ。知り合いの日本人が「南京でタクシーに乗ったら運転手が虐殺の話を持ち出して非難された」と話していましたが、それは、「南京だから」ということではありません。

逆に全国どこでも、ありえる話ですね。私もほかの都市で同じような経験をしたことがありますが、まれにそういう人もいるというだけです。それに、タクシーの運転手は地方からの出稼ぎの人が多いですから、純粋に“南京人”というわけでもありません。いずれにしても、日本人が思っているような感じで、過去を問題にしている中国人は本当に少ないですね。

中村:歴史問題は、北京の共産党政権が政治的に利用しているだけなんですね。それを、日本のメディアやインテリたちがストレートに受け取りすぎるんです。

国内の不満のはけ口として、海外に敵をつくるというやり方は、カネもかけずに国民の意識を政権に向かせることができる、いわば常套手段なんです。ですから、日本は受け流せばよいものを、「なにくそ」と正面から受け止めてしまっている。これでは相手の思うつぼですよ。先ほど話に出ましたが、中国人のほとんどは、日本よりも共産党のほうが嫌いですし、過去にひどいことたくさんされたと思っています。

小林:中国の一般の人たちは共産党のことを信用していません。「日本憎し」などという前に、自分たちの政府に愛想をつかしてしまっているんです。だから、金持ちはどんどん海外に脱出している。それが、どうも日本にはうまく伝わらないというか、日本人は理解できないんですね。

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