では、かつての「汽車旅」の雰囲気を満喫できそうな列車はないのだろうか。
ユニークなのは、ジョホール・バルのJBセントラル駅から、Y字の右側先端にある東海岸のトゥンパト(Tunpat)まで直行する1日1往復の夜行列車だろう。ディーゼル機関車牽引の同列車は寝台車も連結しており、所要16時間の汽車旅が存分に楽しめる。ちなみにトゥンパトの北側はタイと接しているが、両国は川で隔てられていることもあり、鉄道による連絡はない。
高速鉄道計画はどうなった?
日本で一般的に「マレー鉄道」として理解されているルートは、タイの首都バンコクからシンガポールまで、マレー半島のインド洋側に面する西海岸を通るものだ。電化区間も西海岸線に集中しているように、こちらがマレーシアの屋台骨を支える鉄道ルートといえる。
だが現在、東海岸のトゥンパトにほど近いコタバルから半島を縦断し、最終的にクアラルンプール郊外に位置するマレーシア最大の貿易港、クラン港に至る鉄道「ECRL」の敷設が進んでいる。この新路線は中国の手により建設されている。マレーシアの輸送需要にはそれほど貢献しないようにも見えるが、中国にとってはマラッカ海峡を通らずにインド洋から南シナ海への「抜け道」を確保するために重要な意味を持つ鉄道だ。
一方、日本の新幹線の導入も一時期取り沙汰されたクアラルンプール―シンガポール間の高速鉄道構想は一旦消滅したように見えたが、現在は両国政府が建設に向けた議論復活に向け検討が続けられている。これとは別だが、毎日多数の通勤客が行き交うマレーシア・シンガポール国境には、ジョホール・バル―シンガポール高速鉄道システム・リンク・プロジェクト(RTS)が2026年末の開業を目指して工事中だ。これは高速鉄道といっても通勤路線だが、こちらは具体的な成果として日の目を見ることになるだろう。
マレーシア鉄道の今
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バターワース駅に停車するETS。同駅は
ペナン島への玄関口だ(筆者撮影)
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バターワース駅に停車するETS
(筆者撮影)
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クアラルンプール駅に停車するETS
(筆者撮影)
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車体側面に入ったETSのロゴ
(筆者撮影)
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クアラルンプール駅に停車するETS。
運行開始時から活躍する91形(筆者撮影)
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ETS91形の車内
(編集部撮影)
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クアラルンプール駅に停車するKTMコミューター。
首都近郊などを走る通勤電車だ(筆者撮影)
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クアラルンプール駅の駅舎
(編集部撮影)
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クアラルンプール駅に隣接するマレーシア鉄道公社
(KTMB)の本社社屋(編集部撮影)
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クアラルンプールの中心駅はKLセントラル駅。
さまざまな路線が集結する(筆者撮影)
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KLセントラル駅のKTMコミューター乗り場
(筆者撮影)
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KLセントラル駅には日本語の表示も目立つ
(筆者撮影)
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KLセントラル駅のホームは地下だ
(筆者撮影)
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コミューターへは、ICカード乗車券
「Touch'N'GO」で乗る(筆者撮影)
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首都以外でも通勤電車が走る。バターワース駅に
停車するKTMコミューター(筆者撮影)
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タイ国境のパダン・ブサール駅に停車する
KTMコミューター(筆者撮影)
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パダン・ブサール駅に入線する「ETS」92形
(筆者撮影)
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シンガポール行き客車列車はディーゼル機関車が牽引する
=JBセントラル駅(筆者撮影)
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ジョホール・バル側の非電化区間を走る客車
(筆者撮影)
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シンガポール行き「テブラウ・シャトル」客車の車内
(筆者撮影)
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日本人にとって、タイとシンガポールは海外旅行先として身近だが、マレーシアはとくに鉄道旅行の面では今ひとつ知名度が低いようだ。昔ながらの「汽車旅」とは大きく変わったが、近代的な電車の車窓から熱帯雨林の風景を楽しむのも面白いのではないだろうか。
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Motomi Sakai
旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com
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