東日本大震災、在日フィリピン人被災者が直面する苦難、自宅を失い、同僚とも連絡が取れず

東日本大震災、在日フィリピン人被災者が直面する苦難、自宅を失い、同僚とも連絡が取れず

法務省の在留外国人統計によれば、宮城県内の外国人登録者数(2009年12月末)は1万6500人。うち中国人7549人、韓国・朝鮮人4439人、フィリピン人1039人などとなっている。3月11日に起きた東日本大震災では、外国人も大きな被害を受けた。

宮城県石巻市の石巻中学校に設けられた避難所には、津波から逃れてきた2人のフィリピン人女性(写真)が身を寄せていた。2人は市内の飲食店に勤務していたが、「津波で店内は浸水し、泥だらけの状態になっている」(高橋アナリザさん、29歳、右)。アナリザさんの母と夫は宮城県女川町の避難所で生活しており、別れ別れになっているという。


石巻中学の避難所で生活するフィリピン人女性

同僚のサカイ・モナソンさん(写真、左)には、フィリピンの親が心配して電話をかけてきたが、「帰国したくてもおカネがない」と話す。モナソンさんが東京のフィリピン大使館に電話をかけたところ、「(東京までの)バス代は出すが、フィリピンまでの航空券は自分で用意してほしいと言われた」。2人の共通の友人であるフィリピン人女性(24)は、宮城県南三陸町にいたときに津波に遭い、それ以来、連絡も取れないままだという。

避難所での生活はプライバシーがなく、「寒いうえに、お風呂に入れないのもつらい」(モナソンさん)。着替える場所も「トイレしかない」という。

南三陸町でも3人のフィリピン人女性に会った(写真)。最年長の佐々木アメリアさん(56、右端)は、夫および3人の子どもと暮らす。地元の小学校で英語の教員を務めるかたわら、フィリピン人女性の世話役を務めている。斎藤ジュリエットさん(44、中)は、夫とともに、わかめやあわび、うになどを取る「海女さんの仕事をしている」。千葉ノルメリータさん(41、写真左)は夫が経営するモーテルを手伝う。

現在、アメリアさんは高台にある親戚の家に身を寄せているが、「電気も水道も復旧していない」という。


南三陸町の避難所(ベイサイドアリーナ)で物資の保管業務を手伝うフィリピン人女性

ノルメリータさんの悩みは夫の通院費だ。夫は慢性腎不全で人工透析を受けているが、地震の後、透析クリニックが送迎のバスを出せなくなった。そのため、東洋経済記者が南三陸町を訪れた3月27日時点では「タクシーで往復1万6000円もかけて、クリニックに通院している」(ノルメリータさん)。「おカネがどんどんなくなり、近いうちに破産してしまう」とノルメリータさんは嘆いた。その後、送迎バスは比較的近い場所まで来るようになったものの、「そこまで行くのにタクシー代が往復4000円かかる」(ノルメリータさん)。幸いなことに、友人のフィリピン人が交代で車を出してくれることになり、今は費用がかからなくてすむようになったという。

宮城県国際交流協会は、東日本大震災発生後に、中国語や韓国語、タガログ語など多言語での相談窓口を設置。「当初は安否確認や移動方法、放射能に関する問い合わせが集中した」(企画事業課の大泉貴広さん)という。現在、そうした問い合わせは減少した一方、「家庭不和や生活再建についての問い合わせが増えている(大泉さん)という。協会は県内各地に職員を派遣し、被災地の実情把握に務めている。だが、「外国人被災者の数は把握できていない」(大泉さん)という。

外国人被災者の生活は困難を極めている。それでも、「地元に残って生活を立て直す」(佐々木アメリアさん)と決意を固める人は少なくない。それほどまで外国人の多くは、地域に根ざした生活を送ってきた。
 


津波でほとんどの建物が流された南三陸町の市街地


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(岡田 広行 =東洋経済オンライン)

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