中国「残酷工場」は、すでに過去の話なのか 世界最大の労働市場には闇と曙光が並存

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農村から出てきた工員たちは、十分な教育を受けていないことも多い。金銭の使い方や管理の仕方、知らない人との話し方、友情の育み方、性教育、保健教育。やらなければいけない教育が多い。当たり前と思っているような常識でさえ、社会や公教育から学んでいない。だから、非常識なことをやってしまう。

つまり、教育することこそが重要なのである。

教育によって、問題を解決しようと取り組んでいる

人との接し方を知らず、孤独になり、辞める。誤解や扇動に煽られ、ストライキやボイコットを起こす。ストレスで、身体を壊す。「無知」こそが諸悪の根源であると考え、教育によって、工場に起こりがちな諸問題を解決しようと考えて粘り強く取り組んでいる。

この取り組みの効果として、離職率は市場平均の3分の1以下を維持し、怪我やトラブルの数が激減し、労使交渉はスムーズになった。CSR活動が、工場の生産性アップに大きく貢献した事例だ。富士ゼロックスでは、今、この自社工場での活動を、サプライヤーに展開しようと考えている。

農村から出てきた工員は、十分な教育を受けていないことも多い。従業員への教育も、企業の競争力を高める重要なCSR活動の様子

確かに中国には、さまざまな「闇」がある。深刻な環境問題や社会問題は、目を覆いたくなるほどだ。

しかし、この富士ゼロックスの活動から分かるのは、問題の根が深く、解決が難しいからこそ、解決すれば価値が得られるということだ。

もちろん、中国のローカル企業の中にもいい企業は沢山ある。そして中国には巨大な市場もある。日本の製品やサービスを高く評価する消費者も沢山いる。

リスクもあるが、チャンスも大きい中国市場。人を育て、地域に根付いた経営を地道に行うことがこの巨大な市場に受け入れられる第一歩かも知れない。

大城 昭仁 インヴィニオチャイナ 総経理兼CEO

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おおしろ あきひと / Akihito Oshiro

野村證券、独立系投資会社を経て、2004年に株式会社インヴィニオ入 社。総合商社、製薬、化学など100社を超える上場企業において、新規事業開発、次世代経営者の育成、グローバル組織開発などのプロジェ クトを主導。2011年より現職。上海市浦東新区外商投資企業協会常務理事。中国の大手研修雑誌の理事も務める。

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