観光名所・奈良のホテル数が全国最下位の謎 あの大仏でも宿泊客を引きとめられない?

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では、なぜ奈良に泊まらないのか? 理由として考えられるのは、観光地の集積だ。奈良市の場合、狭いエリアに見所が固まっており、奈良公園周辺なら3~4時間もあれば回れるし、半日かければ市内の多くの名所を満喫できてしまう。「あくまで奈良はおまけ」。もっと見る場所の多い京都や大阪に滞在拠点を置くというのだ。

日本人観光客の場合は、また別の理由がある。話を聞くと、なんと多くの人が日帰り旅行だったのである。奈良には大阪、京都、兵庫などの近畿エリアからの観光客が多い。日帰りが多く、そもそも泊まる必要がない。実に奈良を訪れる観光客の8割近くが日帰り客だった。

■奈良の観光 出発地ランキング
 <2013年 奈良県観光局>
1位 近畿圏 79.2% (京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山)
2位 中部圏 12.2% (静岡 愛知 三重 その他中部)
3位 東京圏 6.4% (東京 神奈川 埼玉 千葉)

 

とはいえ、ホテルの数が全国最下位とはあまりにも極端ではないか。日本人だけならまだしも、はるばる海外からやってきた外国人は滞在してもいいではないか。そこで取材班がさらに調査を進めると、奈良の観光地としての致命的な3つのポイントを発見した。

奈良に滞在客が少ない3つの理由

■奈良に滞在客が少ない理由①
早すぎる店じまい!お客さん待ちの“大仏商法”

近鉄奈良駅の周辺は、商店街が充実しており、お土産目当ての観光客や、地元の買い物客で連日大賑わい。しかし、夜7時をすぎたあたりから様子は一変。次々とシャッターを閉めるお店が。8時にもなると、商店街のほとんどが店じまいしてしまうのである。お隣の観光地や大阪、京都だったらこうはいくまい。

なぜなのか?お店の人々に話を聞いてみると、気になるワードが飛び出してきた。それが「大仏商法」だ。

デジタル大辞泉によれば

奈良の大仏に参詣する客が立ち寄るのを待つだけで、進んで客を集める努力をしない奈良商人の消極性をいう語。

そう。つまり、奈良に宿泊する人が少ないのは、奈良の観光業者や地元の商売人が、あまり熱心にお客さんを集める努力をしていないのではないかというのだ。

■奈良に滞在客が少ない理由②
奈良にうまいものなし!?頼みの名産品も…

地元民が口をそろえるのが「奈良にうまいものなし」という自虐。実際に、奈良の飲食店数は全国39位。居酒屋登録数ランキングでも、全国43位と、笑ってはいられない状況である。さらに関西のご当地グルメ雑誌を調査してみたが奈良の紹介ページは、ごくわずかだった。

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