保土谷化学工業の郡山工場は震災前の操業水準目指す。11年度は計画停電響くか【震災関連速報】

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保土谷化学工業の郡山工場は震災前の操業水準目指す。11年度は計画停電響くか【震災関連速報】

保土谷化学の郡山工場(福島県郡山市)は4月1日から生産を再開した。被害の程度は比較的軽く、「速やかに震災以前の操業水準に戻したい」としている。

大震災を受け、郡山工場と隣接する子会社・日本パーオキサイド(郡山工場、過酸化水素を生産)はともに操業を停止していたが、配管漏れの修繕など設備の点検・復旧作業が終わり、郡山工場は4月1日から操業再開、日本パーオキサイドも4月7日から操業を開始した。建屋の補修はまだ完了していないものの、生産に支障はない。

被害額や操業損の詳細は現在見積もり中だが、「私見を言えば、10年度(11年3月期)は(最終赤字とか収支ゼロ圏とか)大きく下方修正することにはならないのではないか」(松野眞一・経営企画部長)。操業停止中は在庫の出荷でしのぎ、「顧客に対してもそれほど迷惑はかけずに済んだ」模様。設備の被害が比較的軽微だったことから、生産再開後は「早めに元の操業水準に戻したい」としている。

しかし、11年度(12年3月期)は不確定要因が多い。郡山は距離的に福島第一原発に近く、一部の顧客から、放射線量や通関手続き(検査や証明書の必要性の有無)について問い合わせが寄せられている。また、現在、郡山地区は計画停電から外されているが、夏場には計画停電の対象に加えられる可能性もある。計画停電が実施されれば、連続生産を前提としている過酸化水素は、大きく効率性を阻害される。会社側は「11年度の業績見通しについては、5月13日の10年度決算発表までに固めたい」としている。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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