5類と円安で加速「オーバーツーリズムの脅威」 SDGsは適切に行えば「コスト削減」につながる

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まず、「持続可能な観光(サステナブルツーリズム)」と聞けば、「ハードルが高い」と思う人が多いのではないか。「サステナブルツーリズム」の根底にあるSDGsに関しては、大手はともかく中小企業や小さな自治体からは、「手間暇だけかかって儲からない。そんなのをやっている余裕はない」といった声がよく聞かれる。だが、村山氏は「まずは、その誤解を解いておきたい」と言う。

「例えば、ホテル・旅館であれば、通常の電球をLEDに変えれば消費電力が減る。また、最近増えているが、客室からアメニティーを撤去し、フロント付近に設置したアメニティーバーから必要な分だけを取ってもらうようにした結果、大幅なコスト削減につながったという話も聞く。さらに2泊以上の連泊の場合にルーム清掃やベッドメイキングの頻度を下げるオプションを提供すれば、人件費や環境負荷を下げることにもつながる。つまり、SDGsは適切に行えば、むしろコスト削減につながる。諸物価が高騰している昨今の状況下における有効な経営手法として、もう少し理解が広がればと思う」(村山氏)

誤解されがちな「サステナブル」

また、村山氏はもう1つ、「サステナブル」に関して誤解されがちなことがあると指摘する。

「サステナブルと聞くと、どうしてもゴミ・騒音など環境問題に意識がいきがちだが、本来は社会・経済・環境の3つの観点で取り組むことが望ましい。つまり、地域社会に雇用を創出するといった『社会』の持続可能性、地域にお金を落とし、それを上手にまわしていく『経済』の持続可能性、これに『環境』を加えた3つの観点で持続可能な観光を目指すべきだ」(村山氏)

そして、これらがうまくまわっている例として村山氏が挙げるのが、愛媛県大洲市という城下町の取り組みだ。大洲市のDMOであるキタ・マネジメントは、老朽化していた古民家をリノベーションし、街全体をホテルに見立てた分散型ホテル(26棟32室)として活用するほか、飲食店や雑貨屋などにテナント貸しする取り組みを進めている。これらは街並みの保全と地域活性化に貢献しているのはもちろん、古民家のリノベーションに地元の職人が携わるなど、雇用の創出にも一役買っている。

古民家や歴史的建物をホテル等に活用する愛媛県大洲市の街並み(写真:キタ・マネジメント)

さらに、リノベーションした古民家のテナント収入などがDMOの財源になっており、「DMOではあるが、形態としては民間の不動産会社に近い。ファイナンスがうまく機能しているのが、事業が成功した大きなポイントだ」(村山氏)という。

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