人工透析患者の最後の砦として役割発揮、一方で病棟が被害受け建て替えが必要に-東日本大震災、その時、医療機関は《2》仙台社会保険病院

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人工透析患者の最後の砦として役割発揮、一方で病棟が被害受け建て替えが必要に-東日本大震災、その時、医療機関は《2》仙台社会保険病院

東日本大震災では多くの病院や診療所が被災したため、かかりつけの医療機関で人工透析を受けることのできない慢性腎不全患者が続出。「透析難民」が大きな問題になりかけた。

 そうした中で、震災翌日の3月12日朝から「24時間体制で透析を行っています」「すべての患者さんを受け入れます」とラジオを通じて呼びかけたのが、仙台社会保険病院(許可病床数428床)だ。
 
 同病院が丸2日(48時間)にわたって、「不眠不休」で透析医療の「最後の砦」の役目を果たすことで、透析患者の難民化は回避された。田熊淑男・仙台社会保険病院病院長および佐藤壽伸・同病院腎疾患臨床研究センター長に、震災発生当時の状況について聞いた。

--東日本大震災では、透析患者の生命が危ぶまれました。そうした中で、「腎疾患の総合病院」「最後の砦」としての責務を発揮すべく、不眠不休で治療を続けたと聞きます。

田熊淑男・仙台社会保険病院病院長田熊 震災により、病院の中央部に位置する第2病棟の壁面に穴が開いてしまったため、同病棟にいた入院患者全員を最も築年数の少ない第3病棟および健診センターに分散避難させました。透析室は比較的新しい第3病棟にあったため、入院患者の避難場所にもなりました。

そうした中で、震災当日は入院中の患者さんの安全確保と透析施設を初めとする院内設備の点検に当てました。そして、自家発電機や給水車、治療に必要な物品などを確保したうえで、透析機械の試運転を行い、翌12日朝には「透析可能」な状態にこぎ着けました。

ところがその頃、宮城県内では透析を行うことができない医療機関が続出。医療機関や患者さんからの問い合わせで当院の電話が鳴り続けました。


■大震災後、各地の医療機関から仙台社会保険病院に患者が送られてきた

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